飲食店を開業するために、”実は”、一番大切なこと
こんにちは。
10年以上続く飲食店総合サポートコンサルタントの木村美季と申します。
以前は地元の大阪で、飲食店経営を夫婦で始め(夫は料理人、私はほぼ素人からスタート)、15年間女将をしておりました。
その後、飲食店専門コンサルタントとして起業し、現在に至ります。
現在は、飲食店の開業サポートや人材育成を中心に活動しております。
今回で4回目ですが、本題に入る前にお伝えさせていただきます。
私の専門は、店主が一人で経営されたり、ご夫婦や家族経営だったりする
いわゆる「小さな飲食店」様です。
ということで、過去3回のブログ
1回目「飲食店の開業準備に一番大切なこと」(2019.11.01)
2回目「常連客が生まれるチラシの配り方」(2019.11.08)
3回目「脱サラ後すぐに飲食店を開業しない方がいい理由」(2019.12.14)
は、
「客席は40席以下」(極小店舗も含む)
または「年商3,000万円以下」(一日の売上げ約10万円以下)のどちらかに
当てはまる店舗様に向けて、お伝えしてきました。
ですので、
ご自身の店舗や開業したいお店のイメージや規模と
照らし合わせていただき、読んでいただければ幸いです。
が、しかし。
今回のブログ内容のメッセージは、法人・個人、関係なく
「起業・独立・開業される全ての方へ向けて」のメッセージです。
飲食店を始めるにあたり、一番大切なこと
過去ブログ3回、大きくまとめると
「準備をしっかりすること」(特に開業前の集客をしっかりすること)が大切です。
と、お伝えしてきました。
ですが、
飲食店(業)を始めるにあたり、
“実は”、一番大切なことが存在するのです。
それは「心の準備をすること」です。
イコール「折れない心」を開業日までに「育てる(作る)」こと、です。
ほとんどの方は、開業日を迎えるまでに様々な
「こんなはずじゃなかった」
「大変なことになってしまった。どうしよう。」
といったトラブルや困りごとが次々と起こります。
また、
起業前だけでなく、実際に事業を開始した後のほうが、
トラブルや困難が待ち受けている可能性が高まります。
それらは、全力の「折れない心」で受け止めないと、
事業を進めることができません。
(スーパーポジティブな方や、超鈍感力の持ち主は、乗り越えられると思います。)
飲食店の開業準備中に起こった出来事
ちなみに、
私が飲食店を開業する前に起こった出来事を
以下にまとめてみました。
《メンタル面》
● 夫婦ケンカが絶えなかった(多忙&不安からか、二人とも常にイライラしていた)
● 前を走る車と接触事故を起こしてしまった(物件探しが難航しており、先の見えない洞窟状態の日々で心労が重なっており、運転中に一瞬、意識がなくなった)
● 当時の親友がきらびやかな新婚生活だったため、自分の毎日や立場が惨めでしばらく友人に会いたくなかった
● 親にも友人にも辛い毎日を隠していたので吐き出す場所がなかった
《お金のこと》
● 生活がギリギリだった(貯金が全く貯まらなかった)
● 物件が決まるまでの夫の働き先(短期のアルバイト)が、なかなか決まらなかった
● 良い物件と出逢っても手付金が払えなかった
● 諸事情で予定していた資金を借りることができなかった(改装工事が始まっており、支払い日が迫っていた。)
《物件のこと》
● 物件がなかなか決まらなかった(40件くらいは内見した)
● 決まりかけた物件が大家さんの都合で2回もキャンセルされた
● 物件が決まり工事に入ったが、仕上がりが当初伝えた希望と全く違う箇所が複数発覚した
● 物件の近隣住民にクレーマーのような同業者や一般住人がおり開業前から辟易することがたびたびあった
等々…
更に開業した後も様々なトラブル等、起こることが多々ありました。
同業者から悪質な嫌がらせがあったり、お店が放火事件に巻き込まれたり…
商売人と会社員の仕事は根本的に異なる
どんな業種の仕事でも、どんな立場でも、
仕事というのは大変なもので、困難なことを乗り越えなければいけない局面は、誰にもあるかとは思います。
ですが、
会社員と商売人(小さなお店の店主)との決定的な違いは、
「あなたの代りが存在するか、しないか」なのです。
極端な例なので、誤解を恐れず書かせていただくと、
例えば、何かショックなことがあった時、あなたが雇用される立場なら、
仕事をドタキャンしても、会社が潰れることはありません。
周りの方が何とかフォローして下さり、お客様へのご迷惑も最小に防ぐ事が可能です。
ですが、
小さなお店の店主(あなた)は、
仕事を急に休むと、フォローできる代わりの人はいません。
ということは、即、売上げ減に直結します。
それどころか、
来店予定だったお客様の何割かは、余程の常連さんでない限り、
ドタキャンを境に、もう二度と来店してくれません。
(予約なしで、お店に行ったら閉まっていた…みたいな状況です)
ですので、
どんなに辛いこと、悲しいこと、テンションが低い時も
その気持ちを隠し、営業しないといけません。
自分のお店なので、自由に休むのは可能ですが、お客様にご迷惑をおかけするだけではなく売上げ確保できる日が、一日減ります。
ということで、
これから起こるかもしれない様々な問題に、
いちいち感傷的になっていては頻繁に休まないといけません(苦笑)
商売人というのは「図太い神経と同時に、繊維な心が必要である」。
亡くなった夫が、生前、申しておりました。
私も自分が経営者になり、その言葉がつくづく身に染みました。
嫌なこと、腹がたつこと、悲しいこと、苦しいこと、虚しくなること、しんどいこと…
開業準備中も、開業してからも、いろんな事がありますので、
自分のモチベーションの上げ方・戻し方を理解し、
「折れない心」をしっかり作って下さい。
そういう意味でも、開業準備は3カ月~1年くらいかけて、
覚悟も固めていった方がいいでしょう。
心が折れそうになったら、どうすればいいのか?
では、心が折れそうになったら、
実際どうやって、受け止めたり乗り換えるのか。
それは、
何か起こった時「これは何のチャンス?」と考えてみる
ということです。
この言葉は、私が所属している「一般社団法人日本ほめる達人協会」の中で
頻繁に使われる言葉です。
ちなみに私は、この考え方で過ごすようになってから、愚痴や辛いと思うことが
ほぼ無くなり、ストレスもかなり軽減されました。
(以前の私は、短気で怒りっぽく、常にイライラしておりました)
もちろん、この言葉で全てが解決するわけではありません。
ですが、
今までだったら文句が止まらなくなるような「えっ(怒)」と思うような出来事でも、
「これは何のチャンス?」と変換して考えるクセをつけると、身に着くまで
時間がかかるかもしれませんが、
やがて、客観的に見れば「ピンチ」だと思うような出来事が起こったとしても、怒りや落胆の時間が一瞬で済むようになります。
例えば、
飲食店の開業準備で「なかなか物件が決まらない」といったことが結構あります。
そんな時も「まだ見つからない!」とイライラしたり・誰かに当たったり
「どうして見つからないんだろう?」と、悩んだり、落ち込んだり、モンモンとする日々を送るのではなく、
「開業準備の時間が増えたので、更に深い学びができるチャンス」とか
「自由にできる時間が生まれるチャンス」といった感じで、
「起こった出来事の価値を発見すること」ができるようになると、
開業準備期間や、その後のオーナーとしての人生において
いろんなことを乗り越えられる自分に必ず成長します。
「これは何のチャンス?」を思い出す
最後になりますが、4回目に、このテーマを選んだのには
大きく深い理由があるのです。
いくら、美味しい料理が作れて、お金もあって、
たくさんの方に応援してもらえる環境だとしても、
あなたの「心」が元気でないと、仕事と向き合うことができません。
私には、自分が起業した時に、お世話になった方がいました。
その方は、誰からも好かれ、仕事も順調。
責任感も強く、皆から愛される本当に素敵な方。
人から見れば「順風満帆な人生」に見えていました。
もちろん私の目にも。
ですが、その方は徐々に「心」だけが、元気でなくなっていったのです。
その方の「心が元気でなくなった」初期の頃、
その方からプライベートで起こったことの相談を受けたことがありました。
正直なところ、同じような出来事でも、人によっては
何とか笑ってやり過ごす方もいらっしゃるような内容でした。
ですが、
彼にとっては大きな悩みのタネであることは充分理解できました。
その方の悩みを理解することはできましたが、
当時の私は上手く受け止めることができませんでした。
(もちろん、いつでも応援しています。といった言葉は伝えました)
それからの日々。
たまに、ふと
(お元気になられたかな?)
(そろそろお悩みの原因が、解決できたかな?)
(SNSの更新が無くなったけど、どうされているのかな…)
と思い出すことがありました。
すると、
私が悩みをお聞きした、約1年後のブログで
「SNS・仕事、全て活動停止します。」と宣言され、
そして、更に約1年後、自ら命を絶ちました…。
この事実を知った時、大きなショックを受けました。
私だけでなく、きっと多くの方が○○さんは「公私ともに順調!」と思い込んでいました。
でも、
一つの悩みがきっかけで、やがて大きくなり、そしてとうとう昔の自分を
取り戻すことができなかった。それを知った私は悟りました。
いくら仕事が上手くいっていても「心が元気でないと、続けることができない」
それどころか、命を無くすことになるのだ…。と。
だから、慌てず焦らず、せめて1年くらいは、開業準備期間にあて
その間に「心の準備」も一緒にしてほしいと実感したのです。
些細なことでもいいのです。
あなたの身に何か起こったとき、
「これは何のチャンス?」この言葉を思い出していただければ幸いです。
まとめ
今回を含めこれまでも、
もしかすると不安を与えてしまったかもしれませんが
事業を継続していると、それらを上回るほどの、楽しいこと、嬉しいこと…
泣くくらい感激すること…
きっとあなたにもたくさん訪れますので、
どうか夢を諦めないで「メンタル」の準備もお忘れなく進めて下さい。
計四回、飲食店(業)開業について、お伝えさせていただきました。
お付き合いいただきまして、有難うございました。
この記事を書いた人
木村 美季
10 年以上続く飲食店開業・運営コンサルタント
一般社団法人 日本ほめる達人協会 特別認定講師
ミラサポ(中小企業庁)専門家派遣講師
大阪産業創造館 経営相談室あきない・えーど 登録専門家
大阪府茨木市在住。女将歴 15年。飲食店の女将として 10 年間の夫婦営業。
2010 年に夫が急逝。
その後、自身の体験を活かし、飲食専門コンサルタント&講師として起業。
現在は開業や廃業支援(売上げアップ)の他、人材育成にも携わる。
開業サポート実績は、居酒屋・日本酒メイン創作料理・中華料理・日本酒メイン創作料理居酒屋・日本酒メイン bar・カフェ ・ シェアルームカフェ・ブックカフェ・モデルルーム併設カフェ ・海鮮丼居酒屋 など、小さな個人経営の飲食店が多い。