独立開業するときに知っておきたい事業計画書の書き方
事業計画書を自分のために作るのであれば自由に作ってもいいですし、書き方も自分の好みでいいと思います。しかし、投資家や金融機関といった取引先に見せるための事業計画書であれば、少し視点を変えて取り組む必要があります。
事業計画書を書くときの心構え
事業計画書には決まったひな型というものはなく、この内容を書かないといけないという取り決めもありません。そのため、自分の書きたいことを書いてしまうケースが多くなるのですが、それだと相手の知りたいことがぼやけてしまい、相手にフラストレーションを与えてしまいます。
したがって、事業計画書を書くときは「誰が読むのか?」という観点を忘れてはいけません。相手が何を知りたいのか見極めることで、事業計画書に盛り込む内容は自ずと決まってきます。
資金調達のための事業計画書
独立開業したときに事業計画書を書くケースとして最も多いのは「資金調達」をするときだと思います。資金調達の方法はいくつかありますが、大枠で言えば、投資家が行う出資と、金融機関が行う融資の2つに分かれます。
起業家のみなさんから見れば、投資家も金融機関も単なる資金調達先の一つかもしれませんが、見方によっては両者は正反対の性格を持っています。そのため同じ内容の事業計画書でも、投資家と金融機関で評価が真逆となるケースが少なくありません。
資金調達をするために事業計画書を作るときは、事業計画書のポイント(=相手が何を知りたいのか?)をしっかりとおさえる必要があります。
投資家と金融機関の大きなちがい
事業計画書のポイントをおさえるために、投資家と金融機関の違いを知っておきましょう。
投資家と金融機関の違いを知るには、出資と融資の特徴を知るのが最も手っ取り早い方法です。出資と融資の特徴を簡単にまとめると、次の通りです。
出資は「ハイリスク・ハイリターン」
出資は資金と引き換えに会社の株式を取得します。出資と同時に株式の受け渡し(売買)が完了するため、投資家は出資先の経営がいくら悪化したとしても、基本的に「資金を返してくれ」と請求することはできません。そして出資先が経営破綻すれば投資額の全額が消失します。
このように出資は資金を回収し損ねる確率が高いため、その損失を上回るだけの高いリターンがなければ成り立ちません。
投資家が得られる主なリターンは「キャピタル・ゲイン」と呼ばれるものです。つまり取得した株式の価値が上昇し、その株式を売却することによって得られる売買差益です。
株式の価値が上昇するほど投資家が得られるリターンは大きくなり、そのリターンに上限はありません。
融資は「ローリスク・ローリターン」
融資は「貸す」と「借りる」の関係です。そのため経営状態の良・不良に関わらず、会社は借入した元本と法定の貸出利息を、約束した期日に返済する義務を負います。この安定的、継続的に入ってくる貸出利息が金融機関のリターンの源です。(インカム・ゲインといいます)
日本銀行が公表しているデータを確認すると、国内銀行や信用金庫における新規貸出利率の平均は概ね0.5%~2.5%であり、金融機関のリターンは総じてローリターンといえます。
つまり金融機関は、リターンとの関係で言えば、ハイリスク・ローリターン or ローリスク・ローリターンのいずれかの選択をすることになり、当然の結果として後者が選択されます。
また金融機関は株主や預金者から安全な資産運用を求められていることから、そもそもハイリスクな融資を実行することが困難なビジネスモデルといえます。
投資家や金融機関に何をアピールするべきか?
投資家には「急成長性」をアピールする
キャピタル・ゲインを目的とする投資家にとって最も重要なポイントは「取得した株式を高値で売却できるか」です。未公開株式を売るわけですから、そう簡単にはいきません。
代表的な売却方法は、株式の上場か事業売却(=他企業に出資先の事業を買収してもらうこと)となります。また投資家の気持ちからすれば資金の回収に数十年も待てないので、なるべく短期間に資金の回収をしたいところです。
したがって、投資家に提出する事業計画書は「急成長性」が焦点になっていなければなりません。つまり短期間で相当程度に成長する見込みがなければ出資対象にならないということです。
投資家は、資金を回収し損ねる確率が高くとも、急成長が見込める会社を求めています。
金融機関には「堅実性」をアピールする
金融機関の融資判断基準は「毎月の返済をしっかりと行えるか」です。もちろん成長性も融資判断の重要なポイントですが、投資家ほど高い成長性を期待しているわけではありません。
たとえ会社が急成長したとしても、金融機関が得られるリターンは法定の貸出利息を超えることはありません。金融機関は貸し倒れのリスクをとってまで、企業が急成長することを求めていません。
したがって、金融機関に提出する事業計画書は「堅実性」が焦点になっていなければなりません。毎月の収入と支出を可能な限り精緻に計算し、毎月の返済額をしっかりと生み出せる事業であることをアピールする必要があります。
毎月の返済に問題はないという評価を得ない限り、融資が実行されることはありません。
まとめ
これらのポイントへの配慮が欠けると、投資家に提出する事業計画書がサイズの小さいものであったり、金融機関に提出する事業計画書がハイリスクなものであったりと、焦点がズレた内容となってしまいます。このミスマッチは、何の成果も生まないどころか、相手にマイナスの印象さえ与えてしまいます。
最近では、出資の特徴をもつ融資や、融資の特徴をもつ出資など、様々な金融商品が開発されています。事業計画書を作るときは、金融商品の性格を考慮しつつ、相手が知りたい内容に的確に応えるようにしましょう。
今回はここまで。
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