起業家が知っておきたい企業余命の考え方
中小企業白書(2011)によると、起業して10年間生存できる企業の割合は約70%、20年間生存できる企業は約50%となっています。このデータには、個人事業主などのデータが含まれていないので実際の企業生存率は更に低いかもしれません。この生存期間を逆にとらえると、企業の余命と考えることができます。この企業余命について、知っておきましょう。
起業初期に閉鎖する会社の特徴
魅力的で素晴らしい事業であるにもかかわらず、起業初期に閉鎖する会社が数多くあります。その主な原因は「資金不足」です。事業の閉鎖理由は「大病」「後継者の不在」「事業譲渡」などいくつか挙げられますが、起業初期においては「資金不足」を理由とする事業閉鎖が圧倒的に多いといえます。
資金不足に陥る最大の理由
起業時の資金計画が原因
起業初期に資金不足に陥る最大の理由は「起業時の資金計画」にあります。本来、事業計画と資金計画は2つで1つですが、事業計画に比べて資金計画はないがしろにされる傾向にあります。おそらく資金計画にかける労力や時間は、事業計画の10分の1にも満たないでしょう。練られていない資金計画で起業すれば、軌道に乗る前に資金不足に陥るのは当然のことかもしれません。
なぜ資金計画は練られていないのか?
「こんな製品を作ろう」「こんな新しいサービスを展開しよう」といった事業創造のプロセスは、ベンチャースピリットが旺盛な起業家にとって非常に楽しくワクワクするものでしょう。
一方、資金計画については現実的で面白味がなく、数字の計算が嫌いな起業家にとっては苦痛以外のなにものでもありません。大切なことだと意識しつつも「考えるのが苦痛だ」といって踏み込まない起業家が大半です。
資金計画は精度が命
資金調達力が限られる起業家にとっては、大きな見込み違いをすると致命傷となります。ここが企業内の起業とは大きく違うところです。まず目の前のコストにいくら必要かというミクロ的な感覚は捨てましょう。
「事業を立ち上げるのに初期投資額が全体で〇〇円かかる」、「毎月の固定費、変動費は〇〇円かかる」「〇月までに収益を上げないと資金が底をつく」などマクロ的な視点で資金計画を考えましょう。
見込み違いは必ず起こるものです。
そのため、その見込み違いを最小限に抑えることが重要になります。
起業は資金繰りとの闘い
起業と同時に企業余命(タイムリミット)が決まる
起業は資金繰りとの闘いでもあります。なぜなら、起業と同時にタイムリミット(資金が底を尽くまでの期間)が自動的に決まるからです。たとえば、手元資金300万円で起業し、月々のランニングコストが50万円であれば、タイムリミットは6カ月となります。仮に初期投資が100万円なら、タイムリミットは4カ月まで短縮します。どこかのタイミングで資金投入ができればいいですが、資金調達力に乏しい起業家が、それを計算に入れるのは非常に危険です。
収入をあげると企業余命は延長する
収入があれば、たとえ赤字であっても、その収入額に応じてタイムリミットは延長します。逆に、収入がないと手元資金は目減りし、資金が底をついたときに事業は立ち行かなくなります。
したがって、企業余命が来る前に何としても収入をあげなければなりません。最終的に資金収支が黒字化(≒損益分岐点売上高の突破)すれば、タイムリミットに怯えることなく事業活動ができます。
起業家はまずこの段階を第一目標にしましょう。
事業が認知されるまで時間がかかる
どんなに魅力的な事業でも、それが市場に認知されない限り収入に繋がりません。事業の認知スピードは、商品(サービス)の内容、プロモーションにかける予算などで大きく変わりますが、長い時間がかかると想定しておきましょう。
用意している商品やサービスが、計算通りに市場に受け入れられるのは稀です。起業家は事業計画を柔軟に変更しながら市場に受け入れられる形に調整しなければなりません。その試行錯誤の時間もあらかじめ計算に入れておきましょう。
資金不足に陥る前に軌道に乗る秘訣
事業活動に優先順位をつける
「タイムリミットがある」「事業が認知されるには時間がかかる」の2点を考えれば、おのずとやるべきことが決まります。またやるべきことのスピード感も決まります。起業初期は多種多様な仕事が混在しますが、まずは収益につながる活動に集中すべきです。収益に直結するものから着手し、収益につながらないものは可能な限り後回しにしましょう。
起業すると24時間があっという間に過ぎてしまいます。一人で抱え込まず、仕事を適度にアウトソーシングして最短距離で収益確保を目指しましょう。
事業計画と資金計画を紐づける
資金調達力が限られる起業家にとって、起業時の不適切な資金計画は致命傷となります。そのため、より堅実な資金計画を立てなければなりません。
より堅実な資金計画を立てるためには、事業計画と資金計画を常に紐付けて考える習慣を身に付けなければなりません。この習慣は経営者になった後も非常に大切なことです。
例えば、ある機械を購入するとき「機械代が〇〇円」という視点だけではなく、「その機械から生まれる利益が〇〇円で、〇年後には投資額を回収できる」といった視点です。
スモール・スタートに徹する
初期投資額やランニングコストが小さいほど、タイムリミットまでの時間を長く確保できます。ランニングコストや初期投資を厳選し、スモールスタートを心がけましょう。
まとめ
資金不足に陥る前に軌道に乗せる秘訣を、一言でまとめると「長生き戦術」です。市場に長く生き残るほど、ノウハウや経験知が蓄積されます。事業の認知度も上がり、事業のファンも次第に増えていきます。また人的ネットワークが広がることで、より上手に事業を進めることができます。起業家にとって長く生き残ることは非常にメリットが大きいといえるでしょう。
今回はここまで。
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