メガバンクを最大限利用して法人経営に役立てる方法
メガバンクとは、日本全国に支店を有し、巨大な収益規模や資産を持っていて、一般的には保有している純資産が100兆円以上の銀行グループのことです。法律に定義があるわけではありませんが、一般的に、3大メガバンクと呼ばれるのは、三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3行になります。
バブル崩壊後、大手金融機関同士が合併して誕生し、預金量や貸出量が大きく、大企業や上場企業を取引先に持ち、国際展開も積極的に行っています。
メガバンクには他の都市銀行や地方銀行、証券会社などの金融機関とは異なる特徴があります。その特徴を知っていれば、メガバンクの機能をフルに活用して法人の経営に活かすことが出来ます。
メガバンク=総合金融機関
メガバンクというと、なんだか「大きな銀行」という印象を抱かれる方も多いのではないでしょうか。しかし、実はメガバンクは単なる「銀行」ではなく「総合金融機関」と呼ぶほうがふさわしい経営形態をとっています。具体的に言えば、メガバンクはホールディングス(持株会社)を設立しており、大株主として傘下にある企業を管理・経営しています。
たとえば、三菱UFJフィナンシャルグループは、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングス、三菱UFJリース、三菱ニコス、その他多数の金融機関によって構成されています。フィナンシャルグループという巨大組織を活かして、社内の組織を連携させ、企業間の連携を強化し、関連性の高いサービスを同時に提供することで、事業間の相乗効果を生み出しているのです。
三菱UFJ銀行の担当者と取引があれば、その担当者が三菱UFJ信託銀行や三菱UFJ証券ホールディングスの窓口として、融資・信託・証券につなげるとうサービスを利用することができます。
フィナンシャルグループ傘下の機能
それではフィナンシャルグループ傘下の具体的な企業を見ていきましょう。これらの企業は、銀行の担当者一人と取引をすることによって、ワンストップでグループ企業と取引をすることが出来ます。これが地銀や他の都市銀行にはないメガバンクの最大の魅力です。それぞれの役割を抑えておけば必要な時に必要な機能を活用することが出来ます。
銀行
フィナンシャルグループの中でも最も頻繁に取引のある機関になるのではないでしょうか。法人が銀行との取引の中で活用できる具体的なサービスは以下の通りとなります。
融資
運転資金や季節資金、納税資金、決賞資金(決算賞与資金)など様々な使用用途に合わせてご融資を受けられます。また、短期プライムレートやTIBOR金利での融資の他に、シンジケートローン、私募債での資金調達、海外で社債を発行する際の外債での資金調達、M&Aファイナンス、プロジェクトファイナンスなど多様な資金調達手段が用意されています。
外為
メガバンクは海外に多くの取引銀行を持っているため、様々な地域との送金に利用できます。また、外為送金や為替予約のみならず、海外進出時に現地の市場の状況やビジネス慣習に合わせた海外業務アドバイザー、トレードファイナンスなど外為に関連する様々なサービスを受けられます。
ビジネスマッチング
メガバンクは日本全国に何百万という取引先を持っています。その中から新たな販売先や仕入先の紹介、商品開発や事業の拡充にあたりビジネスパートナーの紹介をしてもらえます。事業拡大・強化・合理化にあたっての様々な課題をビジネスマッチングで解決できることも多々あります。
事業承継・資産承継
「ウェルス・マネジメント業務」とも呼ばれ、事業承継や資産承継に係る相続、生前贈与、納税資金の相談やソリューションを提供してくれます。これらの課題を銀行内の専門部署やFP、また信託銀行や証券などの幅広いネットワークを駆使して解決してくれます。近年の経営者の高齢化に伴って、メガバンクが特に力を入れている業務ですので、質の高いサービスが期待できます。
業務効率化支援
売掛金回収業務や買掛金支払業務、人事・給与支払い業務の効率化の支援サービスです。取引先の数が多かったり、信用度の低い取引先がある場合は売掛金の消し込みや請求書の発行代行、仕入先が多い場合には電子決済サービスやでんさいサービスなどを利用することで財務や経理への負担を軽くし、業務を効率化することが出来ます。また、給与計算や勤怠管理システムの支援サービスもあり、これらを利用することで正確性・スピードの向上が期待できます。
福利厚生サービス
会社の従業員の福利厚生サービスを代行してくれる業務です。例えば、従業員向けの財形預金制度やレンタカー・各種講習などの福利厚生を充実させることが出来ます。自前で福利厚生を準備できない中小企業に人気のあるサービスです。
証券
野村證券や大和証券などの証券特化型の証券会社と異なり、メガバンク系証券だからこそ出来ることがあるのが魅力です。例えば、銀行と証券でスムーズな情報連携をすることで、財務面を含めた会社の実態把握をした上で最適な提案をしてくれます。証券会社のサービスは主に「投資銀行業務」と「市場商品業務」の2つに分類されます。
投資銀行業務
投資銀行業務とは株式や債券の引受、企業の合併や買収、IPO(株式新規公開)に係るアドバイザリー、不動産の証券化スキーム、私募ファンド・REITの組成などを指します。
株式の引受は上場企業向けのサービスで、公募増資や売出しなどのエクイティ・ファイナンスによる資金調達手法です。案件遂行に際して投資家のアレンジや事務手続をサポートしてくれます。これらのサービスは非上場企業が上場する際にご利用できるサービスとなります。特に、IPOは財務体質の向上、資金調達力の増大、知名度と社会的信用の向上、株式の自由な売買など多くのメリットがあります。また、企業の合併や買収、いわゆるM&Aに際しては買収先企業の選定などの案件組成からクロージング、PMI(M&Aの統合効果を最大化する統合プロセス)までを担ってくれます。近年ではクロスボーダー案件(海外案件)も増加傾向にありますが、メガバンク系証券は海外にも多くの支店を持っているので、海外の企業を買収する際にも利用することが出来ます。
市場商品業務
市場商品業務とは債券のフィクストインカム、エクイティといったサービスです。具体的にはフィクストインカム業務では国債・社債・仕組債からデリバティブ商品まで多様なラインナップを揃えています。トレーディング業務もこちらに含まれています。
エクイティ業務では国内外の株式、CB、株券貸借取引、個別株オプション取引など様々なニーズに対応できる商品があります。
近年では日銀のマイナス金利政策によって超低金利時代となっており、難しい運用環境にあります。しかし、メガバンク系証券は主要取引所である東京・香港・ロンドン・ニューヨークにも支店を有しており、それぞれの拠点が連携して24時間のサポート体制を整えているのが強みです。有価証券の運用に際しても運用のプロが運用パフォーマンス向上のためにポートフォリオのシナリオ分析に基づく最適な改善策を提案してくれます。
信託
信託銀行は通常「銀行業務」と「信託業務」を行っていますが、銀行系信託銀行の場合は信託銀行は「信託業務」に特化していることが多いです。ここからは「信託業務」について解説します。
受託事業
受託事業とは企業年金や資産運用など信託銀行が資金を預かって、投資のプロが安定的に運用・管理してくれるサービスです。企業年金では企業年金制度の導入・変更に際しての制度設計をしてくれます。従業員の福利厚生制度として確定拠出年金の導入も検討できます。資産運用では投資助言サービスや投資信託の商品開発・運用を担っています。投資のプロが運用するので、会社の資産を安定的に増やすことが出来るのが、信託銀行のメリットです。
さらに資産管理業務も担っており、有価証券の保管・決済、貸出による運用など幅広い有価証券活用スキームを検討できます。
HRソリューション業務
HR(Human Resources)とは文字通り、人材の有効活用に関する経営課題を解決するコンサルティングサービスです。具体的には信託銀行が会社の人事部や総務部と共にその会社の役員や従業員の報酬制度を設計してくれます。報酬制度は従業員のインセンティブとして、優秀な人材確保のために重要な課題です。メガバンク系の信託銀行には法律・会計・税務のプロ集団がいますので、外資系の人事コンサルティングファームと比較しても強い優位性があると言えます。
証券代行
近年ではコンプライアンス意識の向上やコーポレートガバナンスコードの導入によって、企業価値の向上を図るためにコーポレートガバナンスを整備することや株主と投資家の対話が重要視されています。こうしたニーズに応えるのが証券代行業務です。会社法では株式会社は定款で株主名簿管理人を設置することができ、設置した場合は株主名簿管理人が株式会社に変わって株主名簿を管理します。信託銀行はこの株主名簿管理人として株主総会運営サポートなどの株主名簿管理や株主との対話促進、ガバナンス関連支援を提案しています。
不動産
信託銀行に「不動産」業務の機能があるのは意外に思われた方もいるかもしれません。
信託銀行の不動産業務は主に法人を対象に所有している不動産の売却や会社の新拠点開設のための不動産購入、分散する拠点の移転・集約などが主なサービスになります。不動産の売却・購入に際しては買い手と売り手を仲介し、取引に際して総合的なアドバイザーとしての機能を果たします。また、保有している不動産に関して、企業価値向上のために財務戦略を踏まえた調査・分析・コンサルティングを行います。
資産金融
企業の保有する売掛債権、手形債権や貸付債権等の金銭債権等の信用力やキャッシュフローを資産運用商品に転換することが出来ます。これに対して個人もしくは法人の投資家が投資することによって安定的な配当を享受できます。これによって、資金調達が必要な会社は今までにないリスク・リターン特性を持った商品に投資が出来ることになります。
市場業務
信託銀行にも外為の機能があります。メガバンク信託銀行は世界中に支店がありますので、24時間体制で為替取引サービスを提供できます。
リース
リースとは「賃貸借契約」という意味で、メガバンク系リース会社は物件のリースは割賦販売、ファイナンス業務を運営しています。大きな設備や機械を持つ企業には便利なサービスです。
ファイナンスリース
企業に代わってリース会社が物件を購入し、それを企業に貸し出す賃貸借契約です。リース期間中に物件価格・金利・諸税・保険料などの金額を支払う最も一般的なリースで、企業は支払い総額の低減や支払い金額を平準化することが出来ます。
割賦販売
企業が希望する物件を契約期間に合わせてリース会社が分割払いで販売し、契約終了後に物件が企業の所有物となる取引です。キャッシュフローの平準化の効果があります。
売掛債権流動化
売掛債権をリース会社が買取り、早期の資金化を図ることが出来ると同時に回収リスクを回避することが出来ます。
オートリース
簡単に言えば、車のレンタルですが、車両の選定から調達、メンテナンス、最終的な処分までをリース会社が請け負ってくれます。これらすべての車両関連業務をアウトソールできるサービスです。
メガバンク&フィナンシャルグループ傘下企業のサービスの組み合わせ例
それでは実際にメガバンクの担当者を窓口としてフィナンシャルグループ傘下の企業のサービスを利用した場合のサービスの組み合わせの例について解説します。これらのサービスの総合的な提案はメガバンクだからこそ出来ると言っても過言では有りません。
融資×事業承継(財務アドバイザリー)
事業承継の際に重要なの会社の後継者が現経営者の保有する自社株を買い取ったり、会社が新たにホールディングスを設立して、株式を集約するプロセスです。このような場合、自社株の購入資金が必要となります。その購入資金を調達する先をメガバンクにすれば、事業承継の相談は財務アドバイザリーが受けて、必要資金は銀行から借入をするというようにメガバンクの担当者1人を窓口としてスムーズに進みます。
融資×不動産(信託)
不動産の売却・購入を検討している際にメガバンクの担当者に相談すると、信託に連携して、信託銀行が買い手もしくは売り手を見つけて来てくれます。法人用不動産の購入は巨額になることが多いですが、この場合の資金調達も銀行からの借入で賄うことが出来ます。銀行と信託が密に連携することですべてのプロセスがスムーズに進みます。
融資×M&A(証券)
M&Aによって「規模の経済性」の追求や事業の多角化、新規事業参入といった効果が期待できます。メガバンクの担当者にM&Aについて相談すると、メガバンク系証券が買収先企業の選定などの案件組成からクロージング、PMIまでを担ってくれます。メガバンクの担当者はすでに決算書やこれまでのヒアリングを通じて貴社の実態把握を進めていますので、証券と連携してから、クロージングまでがスムーズに進みます。
まとめ
メガバンクと取引をすることによって、フィナンシャルグループ傘下の企業の機能を最大限活用して、事業の発展に役立てることが出来ます。一方、メガバンクといえども営利企業なので、常に一定の距離を置いて付き合うことも重要です。
例えば、融資の相談をした時に暗に「保険に入ってくれませんか?」と営業をかけられることがあります。法律上は「抱き合わせ販売」として禁止されている行為ですが、実際には「ほのめかす」という形で行われています。また、不動産の購入や法人運用の相談をすると「融資を受けてくれませんか?」と営業されることもあります。
「ここの銀行にはお世話になっているから…」とつい言うことを聞いてしまいがちですが、必要のないサービスまで無理に受ける必要はありません。その場合はしっかりと断りましょう。
今回はここまで。
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