中小企業ができる定番の節税対策22選
会社経営を行っていく上でキャッシュフローを潤沢にしていくことが必要です。そのためには適切な節税対策を講じることは避けて通ることは出来ません。最終的には税理士などの専門家に相談するとしても、ある程度は自分で考えることができるようになるのは、経営者にとって重要なことです。
節税対策で押さえておきたい2つのポイント
節税をする上で押さえておきたいポイントは2つです。
1点目は「節税効果が永久に続くのか」という視点です。2点目は「出費を伴うか」という視点です。この2点によって節税対策を分類することができるので、しっかり押さえておきましょう。
ポイント1.節税効果が永久に続くのか
節税効果が永久に続かないものも存在します。例えば、「課税の繰り延べ」といって、課税のタイミングを後にずらす手段があります。この場合、あらかじめ益金計上と同じタイミングで損金を計上できるプロジェクトなどを用意しておく必要があります。
ポイント2.出費を伴うか
会社を経営するうえで最も重要な要素の一つは、現在の手持ち資金(現金預金)を確保することです。貴重な資金を犠牲にして節税対策をするのは本末転倒となるケースもあります。キャッシュフローが豊富でない場合には出費を伴う「節税対策」は逆効果になることがあるので注意しましょう。
定番の節税対策22選
それでは、中小企業でも行うことができる定番の節税対策をご紹介します。
(1)利益が上がるタイミングで支出を調整する
会社の利益が上がる時期を見通し、そのタイミングで各種費用を支出するといった調整をすることが節税対策として重要です。例えば、大幅な黒字になることが見込まれる年度で大規模な設備投資や修繕の予定を少しだけ前倒しにして実施します。そうすれば、その費用を経費に算入することが出来るので、黒字だった金額を少なくすることができます。
ただし、近い年度で確実に予定されている支出に限定されます。節税目的で本来必要ではない支出の計画を立てることは本末転倒ですので注意しましょう。
(2)出張旅費規程を整備する
営業等のために宿泊を伴う出張が多い企業の場合は、「出張旅費規程」を作成し、出張手当の制度を整備することが節税対策になります。出張旅費規程に基づいて決まった額を「出張手当」として支給した場合、会社の業務上必要な経費とみなされ全額が損金算入されます。給与所得として扱われないので、従業員にとって所得税がかからないというメリットもあります。従業員にとっても手取りが増えるという嬉しい制度です。
出張旅費規程を整備することは会社にとっても従業員にとってもメリットになります。「出張旅費規程」は多くの雛形があるので、整備に手間もかかりません。一方、出張手当の金額は、社会通念上相当な範囲内に設定する必要があります。また、税務署調査が入った時に備えて出張の記録をしっかりと保管しておくことが必要です。
(3)研究・開発等に関する各種優遇税制を利用する
中小企業の場合、一定の条件をみたす研究や開発、投資、従業員の雇用などを行った場合には、税制上の様々な優遇税制を利用できます。例えば、減価償却費は法定耐用年数の間は費用計上しますが、全額を一年で費用計上できる、あるいは多めに費用計上できる制度もあります。
(4)未払費用となる経費を計上する
従業員の給料、事務所の賃料、水道光熱費、通信費などは毎月継続的に発生する経費です。これらは実際にサービスを受けた翌月に後払いするケースが大半ですが、後払いになるものは未払いの状態にありますので、「未払金」や「未払費用」として、当期の経費に計上することになります。
中小企業の場合、未払費用や未払金を現在の年度内に計上することが徹底されていないケースが多くあります。その結果、本来であれば経費に入れることができるものが計上できていない可能性があり、その分だけ税金を多く支払っていることになります。
(5)短期前払費用を年度内に損金計上する
前払費用とは、これからサービスの提供を受けて、費用を前払いするものです。例えば、事務所の賃料や保険料、駐車場代、リース料などが該当します。前払費用は原則的には後でサービスの提供を受けた時に経費に算入することになります。
しかし、短期前払費用という特例を活用することで、前払費用を契約書で「年払い」と指定して、決算までの間に次の年度までの分を一括して支払えば、その年度の損金に次の年度までの1年分の全額を一気に算入することが出来ます。期末になってから駆け込み的に行う対策としても有効です。しかし、新たに契約を結ぶ場合にはキャッシュが必要になりますので、節税目的で契約を締結することは避けましょう。
なお、税理士の報酬のようにサービスの内容が毎月均質でないものについては、短期前払費用に該当しませんので注意が必要です。
(6)役員給与を「定期同額給与」にする
役員に対する給与は従業員と同じように毎月一定額を支給するのであれば損金に算入出来ます。定期同額でなくなると損金に入れることができなくなるので、普段から定期同額給与にしておく必要があります。
(7)不要な固定資産の「売却損」「除却損」「評価損」を計上する
不要な固定資産をいつまでも持っていると経営効率が悪化するだけではなく、余計な固定資産税や償却資産税もかかってしまいます。
したがって、固定資産については帳簿価格より安い価格で売ってしまえば、差額を「売却損」として計上できます。また、不要な固定資産を廃棄すれば、その資産の帳簿価格を「除却損」として損金に計上できます。さらに災害などによる著しい損傷が生じて、資産価値を低く見積もらなければならなくなった場合は「評価損」を損金に算入することが認められています。
これらは、決算期末の駆け込み的な節税対策として有効です。固定資産台帳に記載されている固定資産については期末に必ず確認するようにしましょう。
(8)棚卸資産の「売却損」「廃棄損」「評価損」を計上する
棚卸資産とは商品や製品などのことを指します。棚卸資産についても固定資産同様に、決算期末の駆け込み的な節税対策として、「売却損」「廃棄損」「評価損」を損金に算入できます。一方で、棚卸資産については一定の要件を満たす必要があるので、顧問税理士に相談し、しっかり確認しましょう。
(9)貸倒損失を計上する
回収の見込みがなくなってしまった売掛金等の不良債権がある場合、その状態がある程度の期間継続したなどの一定の要件を満たせば、その額を「貸倒損失」として、その年の損金に算入できます。
しかし、恣意的に貸倒損失にすることを防ぐために要件はかなり厳しくなっています。貸倒損失は支払いが受けられなくなったけれども債権はあるという状態ですので、経費に計上しなければならない緊急性は低いと言えます。したがって、貸倒損失の計上は、期末に大幅な黒字が見込まれる場合の駆け込み的な節税対策として考えられます。
(10)貸倒引当金を計上する
貸倒引当金は貸倒損失とは異なり、まだ貸倒れになっていないもの、将来貸倒れになる恐れがある場合に備えて、一定の金額を損金に算入できるというものです。要件を満たしている場合には駆け込み的な節税対策として有効です。
(11)欠損金の繰戻還付を受ける
損金の額が益金の額を上回ってしまい赤字になってしまった場合、その赤字分の金額を「欠損金」と言います。税務署に欠損金を申告すると、前年度の黒字分から差し引くことができるので、前年度の法人税が安くなり、その分を払い戻してもらうことができます。しかし、差し引きけるのは「前年度」の黒字の部分に限られます。それより前の黒字から差し引くことは出来ません。
(12)欠損金の繰越控除を受ける
その年の欠損金を次の年度以降の黒字分から差し引けば次の年度の法人税をやすくすることが出来ます。繰越控除の場合は、欠損金が出た年度の次の年度から10年間にわたって黒字分から差し引くことが可能になります。例えば、次の年度の黒字から全額を差し引くことができなければ、その次の年度から黒字から差し引くことができます。
(13)事業年度を繁忙期から始まるように変更する
自社の年間の売上のピークが例年、特定の時期と決まっているのであれば、その繁忙期を事業年度の始まりにすれば、節税対策がしやすくなり、その年の収益の予測が立ちやすく、節税対策をする時間の余裕が持てます。例えば、12月が売上のピークだとすると事業年度の始まりを12月にすると決算期は11月末になりますので、11月末までの間にじっくりと節税対策を行うことが出来ます。逆に、事業年度の始まりが1月だった場合、決算の最終月である12月に大幅な黒字となっても、有効な節税対策はとれません。
また、決算後に法人税等の税金は2ヶ月以内に納付する必要があります。納税により会社のキャッシュフローが圧迫されないように決算期は資金繰りが楽な時期に合わせることが得策です。決算期の変更は一見掟破りのように見えますが合理的で違法性もなく、一回変更すれば永久的に効果が続くので節税対策としてオススメです。
ちなみに決算期は定款で定められているので、定款を変更する必要がありますが、登記は必要ありません。税務署に届け出をすることで手続きは完了します。
(14)役員賞与を「事前確定届出給与」にする
役員に対する賞与・ボーナスは注意が必要であり、利益調整に使われたとみなされると損金算入を否認されてしまいます。役員に対する賞与は損金算入が可能ですが、条件があります。それが「事前確定届出給与」です。
これは、役員に対する賞与を損金に算入する場合は、遅くとも会計年度の最初の4ヶ月目までに金額と支給時期を税務署に届け出る、という制度です。届け出た金額を届け出た日に支給した場合は損金に算入されます。「最初の4ヶ月目」というのが肝要で、1日でも遅れてしまったらアウトになってしまうので注意が必要です。
(15)減価償却資産は中古品の購入を検討する
建物、機械、船舶、自動車、工具、器具といった「減価償却資産」は、それが利用されて収益を出し続けていくにつれて、その資産の価値が逆に減っていくものとして扱われます。減価償却費は法律で法定耐用年数が決まっているのですが、減価償却資産を中古で購入した場合の耐用年数は、法定耐用年数よりも短いものとして扱われ、この短い耐用年数を前提として減価償却費が計算されます。そのため損金に算入できる金額が大きくなるというメリットがあります。
一方で1年単位でみれば効果が大きいのですが、決算期末に駆け込み的に中古の資産を購入したとしても、購入時から期末までの分しか損金に算入されないため、あまり意味がありません。
(16)少額減価償却費の特例を利用する
青色申告をしている中小企業の場合には、減価償却費の損金算入について特例が認められており、1個10万円以上30万円未満の減価償却資産については「少額減価償却資産」として扱われ、年間合計300万円まで、その年の損金に算入ができます。例えば1台25万円のパソコンを12台購入すれば合計300万円をその年の経費に入れることができます。決算期末の駆け込み的な節税対策として利用される企業も多いです。
(17)従業員に決算賞与を支給する
大幅な黒字が見込める場合に決算期末間近でも全従業員に「決算賞与」を支給すれば損金に算入することができます。損金算入の条件は、決算期末までに従業員全員に支給額を通知し、決算期末から1ヶ月以内(次年度の最初の1ヶ月以内)に支給しておく必要があります。従業員への通知は決算期末のぎりぎりになってしまっても問題ないので、最後の最後に取れる駆け込み的な節税対策として有効です。
(18)中小企業倒産防止共済に加入する
こちらは簡単に言えば、課税の繰延です。
日本は法人税率が低下傾向にありますので、同じ利益が出たとしても、いま税金を支払うのか、10年後に税金を支払うのかによって税額が変わります。したがって、10年後に今現在の黒字額を計上することができれば、節税効果が期待できます。これを課税の繰延といいます。
中小企業倒産防止共済は、経営セーフティ共済ともいわれ、取引先が倒産して売掛金債権等の回収が困難になった場合に50万円~8,000万円の共済金の貸付が受けられる制度です。年利0.9%という低い利率で無担保の貸付を受けることが出来ます。年間最大240万円、合計で800万円まで加入が可能となっています。中小企業倒産防止共済の掛け金は月5千円~20万円で全額を損金として算入できます。掛け金は上限でも月20万円となっており、いつでも簡単に増額・減額ができます。
40ヶ月以上加入していると解約した時に100%返金されますので損はありません。解約手当金が戻ってきたら利益になりますが、この際に経費を入れると調整ができます。例えば、今期に「赤字が出そうだ」という時に返金を受けると結果として節税効果を得ることが出来ます。企業経営の理想としては黒字が継続することですが、新型コロナウイルスの感染拡大のように突発的な出来事で赤字になってしまうこともあります。このような時に解約すれば利益が出て、赤字と相殺することも可能ですので、いざというときに使える簿外資産として重宝されています。
(19)オペレーティング・リースを活用する
オペレーティング・リースとは、個人や法人が所有する航空機や船舶などの減価償却資産を他社に貸し付けて賃貸料を得るという賃貸借取引のことです。
オペレーティング・リースでは会計上も税務上も貸し手が賃貸借資産の減価償却費を計上することが出来ます。耐用年数が短い資産を活用すれば、投資の初期では減価償却費が賃貸収入よりも大きくなり、所得が赤字になります。投資の終盤では減価償却が終わっており、資産を売却して、売却益が生じることになります。
(20)小規模企業共済に加入する
中小機構が運営する共済制度で積立による退職金制度です。掛金を全額所得から控除できますので、高い節税効果が期待できます。加入には業種によって従業員数の制限がありますが、中小企業の経営者と役員、また個人事業主の共同経営者も対象に含まれています。「小規模企業共済」という名称ですが、個人事業主も加入できるのがポイントです。
小規模企業共済の掛け金は月千円~7万円で全額を損金として算入できます。掛金は上限でも月7万円と比較的安く、いつでも簡単に増額・減額ができます。得られる節税効果は所得金額と掛金によって異なりますが、所得が1,000万円、月満額の7万円の積立をすると節税効果は1年で36万7千円になります。これを30年続けると1,101万円の節税になります。
ただし、加入期間が20年未満の場合には元本割れしてしまうので、途中の任意解約には注意しましょう。
(21)役員社宅制度を活用する
ポイントは、①会社名義で賃貸契約をする、②社長を含む役員が居住するという2点です。役員の社宅の家賃を支払うと全額を損金に算入できます。また、社会保険料の算定に用いられる給与に算入されませんので、役員個人の社会保険料の軽減にもつながりますので、手取り金額も増えます。家賃の上限や下限は明確な決まりはありませんが、社会通念上相当と思われる範囲内の家賃であることが必要です。
しかし、会社が家賃を支払う一方で役員は家賃の半額を負担する必要があります。つまり、給与からの天引きで家賃の半分を支払う必要があります。
(22)iDeCoに加入する
こちらは法人の節税対策というよりは、法人のオーナー社長の節税対策になります。
iDeCoは2019年頃から「老後2,000万円問題」が騒がれるようになって注目を集めている年金制度です。2001年から始まり、2017年の改定により20歳から60歳のほぼすべての国民が加入することが出来るようになりました。変動はありますが、積み立てた金額の15~50%の金額分の所得税が下がります。さらに所得税が下がることによって、翌年の住民税が軽減されます。最低5千円から千円単位で掛金を決めることができ、年収が高い人ほど節税効果があります。
例えば、年収が400万円で毎月2万3千円、年間27万6千円の積立をした場合は翌年度の税金が4万1,700円の節税効果があります。一方で年収が5倍の2,000万円の場合は毎月2万3千円、年間27万6千円の積立をした場合は翌年度の税金が12万0,600円の節税効果があります。つまり、経営者など年収が高い人ほどお得になる制度です。
節税対策で資金繰りを固めましょう
ここまで中小企業の節税対策について解説してきましたが、自社の状況に合っている対策があればぜひ実行してみましょう。これらの方法を知らないと過剰に税金を納めてしまいかねません。節税額は時には数十万、数百万円に上ることもあります。効果的な節税に取り組み、会社の資金繰りを固めていきましょう。
今回はここまで。
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