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法人保険で節税はウソ!?仕組みと効果を徹底解説

メガバンカー takuo

2021.11.28

会社が企業活動によって利益をあげた場合は、その利益に応じて法人税を支払う必要があります。経営者としては「いかに多くのお金を会社に残せるか」について考え、節税対策を行うことは必須です。節税に関連して、「法人保険に加入すれば節税ができる」という話を聞いたことがある経営者の方もいるかもしれません。本来、保険は経営者や企業活動のリスク対策として加入するものですが、なぜ節税対策として話題になることがあるのでしょうか?

また、そもそも法人保険に加入することで本当に節税効果はあるのでしょうか?
今回の記事では、法人保険が節税対策になると言われるようになった理由や法人保険の仕組みや効果について、税制改正後のルールを紹介しながら解説します。

法人保険に節税効果はない

結論からいえば、法人保険に加入することで節税効果はありません。法人保険に加入し、保険会社に支払う保険料を損金算入することで保険料を支払っている期間は支払う法人税を減らすことができますが、保険金を受け取ったり、保険を解約して解約返戻金を受け取れば、これらの保険金や解約返戻金は会社の利益となりますので、その際に課税されます。したがって、法人保険加入による効果は、節税というよりも、課税の繰り延べになります。それでは、なぜ法人保険に節税効果があると言われているのでしょうか?

法人税の節税方法

法人保険と節税の関係について理解するためには法人税の計算の仕組みについて理解する必要があります。現在、法人税の実効税率は約30%と言われていますので、法人税の計算式は、ざくっと「会社の利益×法人税率=法人税」となります。

会社の利益とは単純な売上高ではなく、会社の売上高から従業員の給与や仕入れ原価、事務所の家賃などの経費を差し引いた金額です。したがって、法人税を少なくする方法は、基本的に①売上高を少なくする、②経費を多くするの2つしかありません。

会社の利益に対して法人税が課されるので、会社の売上高を少なくできれば納める法人税の金額を小さくできます。極端な話、会社の売上高がゼロであれば、法人税もゼロになります。一方で、経費を多く計上することで、会社の利益を圧縮し、支払う法人税を少なくすることができます。

法人保険と法人税の関係

売上高を少なくする、経費を多くするという法人税の節税方法について解説しましたが、法人保険が関連するのは経費を多く計上するという節税方法です。

法人保険に加入し、保険会社に保険料を支払っている間は保険料の一部または全部を損金に算入することができます。特に定期保険や医療保険やがん保険など第三分野の保険には節税目的で加入を決める経営者の方も少なくありませんでした。例えば、保険料の全額を損金算入できる保険に加入し、年間で500万円の保険料を支払うと仮定します。その場合は500万円×30%=150万円分の節税効果があるように思われます。

法人保険に節税効果がない理由

上記のように法人保険に加入して、保険料を支払うことで支払った保険料の分だけ利益が圧縮されるので、節税効果があるように見えます。しかし、実際には法人保険には節税効果がありません。法人保険に節税効果がないといえる理由は以下の2つです。

それぞれについて具体的に見ていきましょう。

理由① 2019年の税制改正

法人保険には、支払う保険料全額が損金算入できる全損タイプ、保険料の半分が損金算入される半損タイプ、保険料が経費にならないタイプの3種類があります。全損タイプと半損タイプの法人保険は保険料が経費になるので、その分会社の利益を圧縮する効果があり、支払う法人税を減らすことができます。

しかし、2019年2月に国税庁が法人保険の保険料取り扱いを見直すという税制改正を告知しました。これまで生命保険会社では企業向けに利益の圧縮効果の大きい法人保険を販売しており、企業も死亡保障や医療保障など保険本来の価値を享受しながら、利益の圧縮のために法人保険を活用していました。しかし、この税制改正によって保険料を損金にするためのルールや基準金額が厳しく、複雑化したことで損金算入される法人保険は非常に少なくなりました。

この税制改正は「バレンタインショック」と呼ばれ、これまで企業向けの法人保険販売に注力してきた生命保険会社にとっては大きな衝撃となりました。法人の経営者にとっても「保険会社に支払う保険料を損金参入して、利益を圧縮する」という従来の手法が通用しなくなったからです。

理由② 解約返戻金は益金となり課税対象となる

法人保険に加入し、保険料が経費として認められる場合は保険料を支払っている期間は利益が圧縮され法人税を減らす効果があります。しかし、加入している保険が満期になったり、解約して解約返戻金を受け取る場合、また被保険者が亡くなることで保険金が支給される場合には、これらの保険金や解約返戻金は益金に算入されます。つまり、受け取った金額分だけ企業の利益が増えて、納める法人税が増加します。例えば、年間500万円の保険料を支払って、150万円(500万円×30%)の法人税を減らすことができた場合はその500万円が保険金や解約返戻金という形で戻ってきたときに500万円が法人の利益となるため、150万円分の法人税を支払うことになります。法人保険の保険料を支払っている間の課税の繰り延べ効果が注目されて、あたかも節税の効果があるようなイメージを持たれていますが、本来の意味での節税効果はありません。

税制改正後の新ルール

法人保険に加入することは「節税」ではなく、「課税の繰り延べ」になることは説明したとおりです。しかし、2019年の税制改正によって、解約返戻率が高いほど損金に算入できる割合が減るルールに変更されたことで、節税どころか課税の繰り延べを目的として法人保険に加入するのも困難となりました。具体的には、税制改正後に法人保険に加入したときの経理処理の方法は、保険のピーク時の解約返戻率によって4つに分かれます。

最高解約返戻金が50%以下
最高解約返戻金が50%超70%以下の場合
最高解約返戻金が70%超85%以下の場合
最高解約返戻金が85%超の場合

最高解約返戻金が50%以下

最高解約返戻金が50%以下の場合は支払った保険料の全額を損金算入できます。保険料の全額損金算入が認められるのは最高解約返戻金が50%以下の場合のみとなっています。しかし、「最高解約返戻金(解約返戻率のピーク)が50%以下」の保険で全額損金にできても、支払った保険料の半額しか払い戻されないため、節税効果はないと言えるでしょう。

最高解約返戻金が50%超70%以下

最高解約返戻率が50%超70%以下で、かつ被保険者1人当たりの年換算保険料合計額が30万円以下の場合は、保険料の全額を損金に算入することが可能です。
一方で被保険者1人当たりの年換算保険料合計額が30万円以上の場合は、保険期間の当初40%の期間は保険料の60%前後を損金に計上できます。

最高解約返戻金が70%超85%以下

最高解約返戻金が70%超85%以下の場合は保険期間の当初40%の期間について支払保険料×40%は損金計上が可能です。

最高解約返戻金が85%超

最高解約返戻金が85%超の場合は保険期間開始日から10年経過日までは、「保険料×最高解約返戻率×90%」を資産計上し、残りを損金として計上します。11年目以降は、支払保険料×最高解約返戻率×70%を資産計上し、残りの割合は損金として計上します。

法人保険に関するよくある勘違い

企業の経営者の中には法人保険に関して「受け取る保険金と、役員退職金を相殺することによって節税効果が得られる」と聞いたことがある方もいるかもしれません。これは「保険金を受け取るタイミングを役員退職金を支給するタイミングと合わせることによって、保険金収入と役員退職金に関する支出が相殺されて法人税が課税されない」というものです。

しかし、保険金を受け取るタイミングと退職金を支払うタイミングが同じあっても異なっても結局は納める法人税の金額は変わりません。本来、保険金の受け取ってもいなくても経営者が引退する時期は必ず到来するものであり、その時に退職金が支払われた分だけ会社の利益が圧縮されて、法人税が軽減されるので、保険金と退職金には相関関係はありません。

法人保険に加入する意味とは?

法人保険に節税効果がないことはここまで説明したとおりです。しかしながら、法人保険に加入する意味がまったくないわけではありません。本来、法人保険とは企業の福利厚生を整えたり、万が一の事態に備えるものです。例えば、中小企業の場合は、会社の取引先との信頼関係や事業ノウハウなどが経営者に依存しているケースも珍しくありません。このような場合は、経営者に万が一のことが起きた場合に事業の継続が困難になります。しかし、法人保険に加入し、経営者を被保険者にすることで会社は保険金を活用して事業を継続することができます。このように「保険で安心を買う」という発想は本来の保険の役割に合致するものです。また、先行き不透明な将来に備え、手元のキャッシュを少しでも多く残すという考えもあるでしょう。保険について検討しているオーナーや経営者の方は、今回の記事を参考に、保険の意義について考えてみましょう。

今回はここまで。
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この記事を書いた人

メガバンカー takuo

某メガバンクに勤務していたバンカー。窓口業務・融資・資産承継・事業承継など、あらゆる仕事でハイレベルな実績を残す。起業家や経営者の成功を願い、現役のときには話せなかった独自のノウハウを紹介する。

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