社内で使う起業企画書の書き方
この記事をご覧の皆さんには、社内で新規事業を企画する際、「起業企画書を作成した方がいいのか」、「作成するとしたら、どのような起業企画書を作成すればいいのか」という疑問を抱いている人が多いのではないでしょうか。
社内で新しい事業を始めるときは、起業企画書を作成して、新規事業の概要や収益のメカニズムなどをきちんと明確化しておく方が得策です。この記事では、社内で使う起業企画書の書き方を中心に紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
起業企画書を作成した方が良い理由
社内で新規事業を企画する際、起業企画書を作成した方が良い理由には、次のようなものがあります。まずは、起業企画書を作成する目的を理解することから始めましょう。
自社の計画しているビジネスに対する理解が深まる
起業企画書を作成した方が良い理由の1点目として、「自社が計画しているビジネスに対する理解が深まること」が挙げられます。新しいビジネスを始める際、頭の中でいろいろと考えるよりも、文字でアウトプットした方が、事業の全体像は明確化します。頭の中の思考だけでは、詰めるべき事項の抜け漏れを防ぐことはできません。 起業企画書を作成して新規事業の概要を文字化することで、ビジネスの全体像をより明確化でき、ひいては自社の計画しているビジネスに対する理解を深めることが可能となります。
自社の持っている強みや弱みを整理できる
起業企画書を作成した方が良い理由の2点目として、「自社の持っている強みや弱みを整理できること」が挙げられます。社内で新規事業を立ち上げるとき、その新規市場で競合する企業との競争(優位性)を考慮しなければなりません。競合他社に勝てる事業戦略を立案していくためには、自社の持っている強みや弱みを正確に把握しておくことが大切です。起業企画書を作成する過程において整理した自社の強みや弱みは、様々なシーンで役立ちます。また、自社の強みや弱みを把握したうえで事業戦略を立案できれば、説得力のある起業企画書を作成することができます。
事業上の達成すべき事項を社内で共有できる
起業企画書を作成した方が良い理由の3点目として、「事業上の達成すべき事項を社内で共有できること」が挙げられます。たとえば、事業を立ち上げてそれを継続していくためには売上を獲得する必要がありますが、毎月どの程度の売上を獲得しなければ黒字にならないのか(損益分岐点売上高の把握)、そのためにはどの程度の営業活動が必要なのかなどを明らかにしなければなりません。 また、自社の提供する新サービス・新商品の価格帯をいくらに設定するのか、どのような顧客層をターゲットにするのかなどについても詳細に決める必要があるでしょう。 そして、その内容を社内の関係者が理解しておかないと、活動が散漫となってしまいます。起業企画書を作成することで、全員が新規事業をどのように運営していくべきかを共有し、力を集結させることができます。
金融機関で資金調達がしやすくなる
起業企画書を作成した方が良い理由の4点目として、「銀行などの金融機関で資金調達がしやすくなること」が挙げられます。金融機関から資金調達をするためには、金融機関に対して自社がどのような事業を始めようとしているのか、調達した資金をどのような計画で返済していくのかを説明しなければなりません。 起業企画書を作成することで、どのような事業をどのぐらいの売上規模で行うのか、また、その収益から幾らぐらい返済していけるのかなどを示すことができます。口頭で新規事業の内容を伝えるのは非常に難しいので、金融機関から資金調達を円滑に進めたいと考えている人は、起業企画書を作成して提出するようにしましょう。
社内で使う起業企画書の書き方
起業計画書には、特に決まった様式はありませんが、記載する項目については基本的な順番があります。起業企画書は、 次のような順番に沿って作成しましょう。
1.現状分析
まずは、社内の現状分析(既存事業の分析)から始めます。現状分析は、自社の内部環境と外部環境に分けて分析する方法が、王道の1つです。
内部環境として分析・整理する項目の例
・経営理念
・企業の沿革
・組織体制、営業体制
・商品やサービスの特性(価格帯など)
・客層
・決算数値などの実績の分析(事業別、月別売上などの分析)
外部環境として分析・整理する項目の例
・市場動向
・人口動向(潜在顧客の把握)
・競合他社の把握
現状分析のまとめ
SWOT分析(SWOTクロス分析)などで強み、弱み、機会、脅威をまとめると分かりやすいでしょう。
2.経営問題の把握
現状分析を行い、どこに自社の経営問題があるかを見定めます。経営問題といっても、「改善すべき問題」というマイナスの意味だけではなく、現在の業績は好調だけれども、ここをテコ入れすればもっと業績が良くなるといったプラスの意味も含まれます。
経営問題は、必ず内部環境の「数値」に表面化します。したがって、決算書や社内データの数値に関する分析はしっかりと行わなければなりません。たとえば、月別売上(日別売上)を把握し、①過去数年間の売上の推移、②前年同月(同日)との比較、③異常値の把握(突出して売上が多い or 少ない月がある)、④市場動向との比較(市場は上向きなのに、自社の事業は不調である)などを、それぞれの項目ごとに数値をしっかりと分析します。
3.経営課題の抽出
経営問題を解決するために経営課題を抽出します。まず、自社の理想の「あるべき姿」を想定しましょう。どのような状態になれば理想なのか、具体的にイメージすることが大切です。この理想の経営状態である「あるべき姿」を見据え、その「あるべき姿」と「現状」のギャップを埋めるものを、経営課題として抽出します。ギャップを埋めるために何をすべきかを想定して課題を決めますが、ギャップがあまりにも大きいと実現可能性が低くなる(従業員の士気が低下するなど)ので、この経営課題の抽出は非常に重要な工程といえます。
4.具体的な取組の策定
経営課題を解決するための設計書として、具体的にどのような取組をすべきか検討しましょう。具体的な取組を実行すれば「あるべき姿」になる(=事業が改善する、ひいては決算書などの数値が改善する)という目線で策定します。
具体的には、以下のことを書きます。これが、いわゆる起業企画書の骨子の部分となります。
(1)具体的な取組の内容(事業ドメイン=誰に何をいくらで販売するのか、など)
(2)市場性(その新規事業の外部環境はどうなのか)
(3)実行体制(誰が行うのか)
(4)予算(いくら投資するのか)
(5)スケジュール(どのようなスケジュールで行うのか)
(6)収支計画(いくら儲かるのか)
起業企画書をスムーズに作成するポイント
起業企画書をスムーズに作成するポイントとして、次の2点を紹介します。
いったん起業企画書を書き終えて、何度も見直す
起業企画書をスムーズに作成するポイントとして、まず、起業企画書のすべての項目を書き終え、何度も見直す方が良いでしょう。起業企画書を書き終えて何度も見直すというのは当たり前のように聞こえますが、起業企画書を一気に完成させるのは難しく、最後に俯瞰的に見渡して調整する方がいいでしょう。いったん起業企画書を書き終えてから見直すと、「この経営問題を解決するための経営課題としては、こちらの方が適切だ」など、各項を行ったり来たりして何度も再検討することになります。そのため、イメージとして、最初にガチガチに固定して起業企画書を作成するより、後々柔軟に変更できるよう柔らかく記載しておき、そこから少しずつ詳細を固めていく方が質のいい企画書となります。したがって、まずは起業企画書を書ききることを目標に進めましょう。
数字を多用すると引き締まった起業企画書ができる
起業企画書の中で数字を使って表すことができる項目は、できる限り数字で表しましょう。たとえば、「多い、少ない」といった抽象的な言葉を使ってしまうと、企画書の書き手の「多い、少ない」と読み手の「多い、少ない」の感覚は必ずしも一致するとは限らないので、内容のボヤけた起業企画書になってしまいます。また、収支計画などを作成するときは、しっかと積算根拠を書くことが必要です。積算根拠のない数値は、検証のしようがなく意味をなしません。たとえば、売上高は「客単価」と「客数」で構成されていますので、客単価●●円、客数●●人などに分解して積算根拠を書くと分かりやすいでしょう。客数は少ないけど客単価が高くて売上が出るのか、それとも客単価は低いけど客数が多くて売上が出るのかでは、事業戦略も営業活動も全く異なります。起業企画書を作成するときは、数字の根拠を示して説得力を持たせることを意識しましょう。
まとめ
起業企画書を作成することは、新規事業を始めていくうえで非常に有効です。収支計画などの数値面を詳細に記載する必要がある場合はワード等で作成し、数値よりも新規事業のアウトラインを視覚的に説明した方がいい場合はパワーポイント等で作成すると分かりやすいでしょう。皆さんが良い起業企画書を作成するため、この記事で説明した内容が参考になれば幸いです。ここまで長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回はここまで。
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