開業届を出さないフリーランスに起こる8つのデメリット
フリーランスになると、さまざまな書類を記入したり提出したりする必要があります。なかでも、事業を始めるときに一番最初に直面する「開業届」に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「フリーランスや副業でも開業届を提出する必要はあるのか」、「開業届を出さないと、どのような不利益があるのか」などの疑問をお持ちの方へ向けて、以下の点について解説します。
- 開業届の提出は必要かどうか
- 開業届を提出しない場合のデメリット
- 開業届を出す場合の注意事項
フリーランスや個人事業主になることを検討されている方、開業届を出すべきかどうか迷っている方は、ぜひご覧ください。
開業届とは
開業届とは、新たに事業を開始したときに税務署へ提出する書類です。
正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という名前で、事業をスタートするときだけではなく、事業を廃止したときや、事務所を移転したときなどにも出す必要があります。
結論から言うと、フリーランスや副業の場合でも、事業を開始したら、1ヶ月以内に開業届を提出しなければなりません。
インターネット上では、「開業届は出さなくてもいい」などと誤った情報が書かれていることがあります。開業届を出さなくても罰則や税務署からの催促がないため誤解されている方が多いですが、開業届の提出は、所得税法229条で定められた「義務」なのです。法人だけでなく、フリーランスや副業の場合でも、新しく事業を始めたすべての人が出さなければいけない書類なのです。
開業届を出さないフリーランスに起こる8つのデメリット
開業届の提出が法律で決められた義務であることを除いても、フリーランスが開業届を出さない場合、多くのデメリットがあります。今回は、そのうちの8つのデメリットについて説明します。
デメリット① 確定申告で青色申告特別控除を受けられない
開業届と青色申告承認申請書を提出すると、確定申告を「青色申告」で行えるようになります。青色申告とは、ルールに従って日々の取引を記帳し、正しい申告をすることで、税制面での優遇を受けられる仕組みです。
青色申告の一番のメリットは、青色申告特別控除として最大65万円の所得税控除が受けられる点です。所得税が控除されれば、その分、納税額を抑えることができます。
冒頭でも説明したとおり、青色申告をするには「開業届」が必要です。つまり、開業届を提出しなければ青色申告はできず、青色申告特別控除は受けられません。
デメリット② 家族に支払った給与を経費にできない
青色申告には、所得税控除以外の節税効果があります。配偶者や子どもなどが専従者として仕事を手伝ってくれた場合、支払った給与を経費として申告できるようになります。
青色申告でなくても専従者控除はありますが、控除できる上限金額が決まっています。青色申告では、事前に届出を提出し、条件を満たしていれば、上限なく経費とすることができます。開業届を提出していなければ青色申告ができないため、開業届を提出していなければ受けられない特典です。
デメリット③ 赤字を繰り越しできない
青色申告と白色申告の大きな違いの1つは、純損失(赤字)の取り扱いです。
青色申告では、事業で発生した純損失を3年間繰り越すことができます。例えば、1年目に100万円の赤字があり、2年目に100万円の黒字となった場合には、1年目の赤字を2年目に繰り越すことができ、2年目も所得税は発生しません。
(1年目) -100万円 → 所得税なし
↓ 繰り越し
(2年目) 100万円 -100万円=0円 → 所得税なし
赤字を繰り越せば、翌年以降の節税につながります。開業届を提出しなければ白色申告となるため、赤字を翌年以降の黒字と相殺できなくなります。
デメリット④ 小規模企業共済に加入できない
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者やフリーランスのための退職金制度です。いわば、会社員と異なり、企業から退職金をもらえないフリーランスが、掛金を積み立てて将来に備えるための仕組みといえます。
小規模企業共済は、毎月の掛金が全額所得控除になるといったメリットがあり、フリーランスにとっては積極的に活用したい制度です。
加入するには、確定申告書の写しを提出しなければいけません。しかし、事業を開始したばかりで、まだ確定申告を迎えていない場合には、開業届の写しが必要となります。開業届を提出していないと、確定申告を終えるまで、小規模企業共済に加入することができません。
デメリット⑤ 屋号付きの銀行口座を作れない
振込をするときなどに、屋号の入った口座名を見かけたことはありませんか?
通常、個人で銀行口座をつくると個人名義の口座となりますが、開業届の写しがあれば、多くの金融機関で屋号付きの口座を開設することができます。
屋号付きの口座があれば、プライベートの口座とのすみ分けができ、資金管理や確定申告が容易になります。それに加えて、フリーランスでも取引相手からの信用を得やすくなります。個人の名前より屋号が入っていたほうが、どのような事業を行っているか人に伝わりやすく、責任を持って事業を行っている印象を与えることができます。
企業に属していないフリーランスだからこそ、取引相手からの信用は、仕事に直結する重要な要素です。
デメリット⑥ 給付金や補助金が受け取れない
新型コロナウイルスの感染拡大により、日本の企業が次々と営業自粛や経営不振に陥りました。そのような企業を守るため、政府が「持続化給付金」の給付をスタートしました。
この給付金は、開業したばかりのフリーランスでも申請でき、最大で100万円の給付金を受け取ることができました。その申請に必要だった書類が開業届です。
現在、持続化給付金制度は終了していますが、小規模の事業者を対象にした「小規模事業者持続化補助金」などは定期的に公募されており、今後も新たな給付金や補助金の制度が開始されるかもしれません。開業届を出さないでいると、今後、給付金などを受け取る機会を逃してしまう可能性があります。
デメリット⑦ クレジットカードの審査に通りにくくなる
フリーランスはクレジットカードの審査が通りづらいと言われています。フリーランスは収入が不安定なため、カードの支払いが遅れるリスクがあるとみなされるためです。
開業届はフリーランスが事業をしている証明になるため、クレジットカードの審査において開業届の提出を求められることがあります。開業届を提出していれば、カード会社からの信用度が上がり、審査にプラスとなるでしょう。
デメリット⑧ 保育園を利用できない
保育園を利用するには、子どもの親が働いていることが大前提です。利用を申し込むにあたり、親が会社員の場合は会社から貰った就労証明書を提出しますが、フリーランスの場合は、自身で就労証明書を作成し提出する必要があります。このとき、地方自治体によっては、仕事の実態がわかる書類として、開業届の提出を求めるところがあります。スムーズに保育園利用を申し込むためには、前もって開業届の写しを手元に用意しておいたほうがいいでしょう。
開業届を出すときに知っておくべきこと
フリーランスや副業の方が開業届を出さないデメリットは数多くあります。一方で、開業届を出すときに気をつけなければならないこともあります。
開業届を出す前に、以下の点について理解しておきましょう。
開業届を出したら記帳義務が発生する
フリーランスや副業の方が開業届を出すと、個人事業主として税務署に登録されます。そして、個人事業主には、取引の内容を帳簿に記す義務が課せられます。青色申告・白色申告にかかわらず、開業届を出したすべての個人事業主は記帳しなければなりません。
記帳は面倒だと思われるかもしれませんが、経営状態を把握できたり、確定申告がスムーズに行えたりと良い面もあります。また、記帳の手間を避けたいがために開業届を出さずにいると、開業届を出すメリットをすべて失います。今は、わかりやすい会計ソフトなどもありますので、一度試してみてはいかがでしょうか。
失業手当がもらえなくなる
雇用保険の失業手当を受け取っている方や、これから受け取る予定の方は、開業届を出すと失業手当をもらえなくなります。
失業手当というのは、就職しようとする意思があるにもかかわらず、職業に就くことができない人がもらえる給付金です。開業届を出す=新しい仕事を始めるということですので、失業状態にはあてはまらず、当然ながら失業手当はもらえません。フリーランスとして働いているのに失業手当をもらった場合には、不正受給となり、罰則が課せられます。
失業手当を受け取るために、事業の開始を遅らせることを考える方もいますが、開始が遅れる分、事業のチャンスを逃しているかもしれません。開業届を出すタイミングについては、慎重に検討しましょう。
開業届を出し忘れたら
開業届は、事業を開始してから1ヶ月以内に税務署へ出さなければなりません。しかし、フリーランスとして新しい仕事をスタートすると、やるべきことが多く、開業届の提出を忘れてしまう方もいるかもしれません。
もし、開業から1ヶ月以上経過してしまっていても、開業届を提出することはできます。ただし、提出が遅れることで、開業届を出すメリットを享受できないケースがあるため、十分に注意しましょう。
例えば、青色申告をするためには、開業してから2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。この期日に間に合わないと、開業届を出していても青色申告ができず、節税効果が大幅に減少してしまいます。
まとめ|開業届の提出は忘れずに!
ここまで、フリーランスや副業の方が開業届を出さない場合、どのようなデメリットが生じるかを中心に説明しました。たった1通の書類を出すか出さないかの違いが、数年後、数十年後には大きな差となって現れるかもしれません。
起業初期は、開業届以外にも出すべき書類や考えることがたくさんあります。しかし、開業届を出すメリットを最大限活かすためにも、事業を開始したら忘れずに開業届を提出しましょう。
この記事を読んで、開業届を提出する必要性を感じていただけたら幸いです。
今回はここまで。
お役に立てたでしょうか?
起業、融資、補助金などについて知りたいことがあれば、公式LINEからお尋ねください。匿名でのご相談にも広く対応しています。営業や勧誘は一切行いませんので、お気軽にお問い合わせください。
公式LINE:友達登録
https://page.line.me/vwf5319u