労働基準法に基づく賃金台帳とは
賃金台帳は、法人であっても個人事業主であっても、労働者を雇う場合に必ず作成しなければならない帳簿です(労働基準法第108条、労働基準法施行規則第54条)。
この記事では、労働基準法上の賃金台帳の書き方を、わかりやすく解説しています。「労働基準法上の賃金台帳を作成したいけど、どう作成すればわからない!」と悩んでいる方に、ぜひ読んでいただきたい記事です。
賃金台帳とは
賃金台帳とは、労働者に支払う賃金や、賃金額を算出する根拠となる労働日数、労働時間といった情報を記した帳簿となります。労働基準法で作成と保管が義務付けられており、労働者名簿、出勤簿とあわせて法定三帳簿と呼ばれています。賃金台帳は、雇用保険の手続き、労働基準監督署の立ち入り調査、補助金や助成金の申請時など様々なシーンで提出が求められます。
給与明細との違い
労働者の賃金を記した書類といえば給与明細がありますが、賃金台帳と給与明細では作成の目的が異なります。給与明細は、労働者本人に賃金の額などを通知するための書類であり、賃金台帳は、事業主が賃金の支払状況を記録しておくもので、法律上、定められている記載項目が異なります。そのため、給与明細を賃金台帳の代わりとすることはできません。
対象となる労働者
賃金台帳は、正社員だけでなく、契約社員、パート・アルバイト、日雇い労働者なども含め、事業所で雇用している全ての人について作成しなければなりません。そのため、パートを1名雇用している個人事業主であっても、賃金台帳を作成して保管する義務があります。
代表権のある役員については、賃金台帳に記載する義務はありませんが、社会保険の手続きの際に賃金台帳に記載している情報が必要になるので、労働者と一緒に作成しておいた方が好ましいかもしれません。ただし、部長や課長など、使用人としての地位をもつ使用人兼務役員の場合には、賃金台帳の作成は任意ではなく、必須となるので注意が必要です。
賃金台帳の書式
賃金台帳は法律で定められた項目を記載していれば、決まった書式は存在せず、自由に作成することができます。法律で定められた項目とは、次の10項目となります。
- 労働者氏名
- 性別
- 賃金の計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
- 休日労働時間数
- 基本給や手当等の種類と額
- 控除項目と額
この10項目を記載していれば、様式は自由です。逆に、この10項目が1つでも不足していると、労働基準法上の賃金台帳とは認められません。
「フォームを1から作るのは手間だ」、「法定項目が抜けていないか気になる」という方は、厚生労働省が公開している賃金台帳の書式を参考にすると良いでしょう。
↓↓こちらからダウンロードできます(ただし、少し使いづらいです)
主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省|賃金台帳
賃金台帳の具体的な書き方
それでは、賃金台帳の具体的な書き方について、以下の記載例に沿って解説します。
①労働者氏名/②性別
賃金を支払った従業員の氏名と性別を記載します。社員番号など、労働者を識別する通し番号があれば、あわせて記載しておくとミスが少なくなります。
③賃金の計算期間
賃金の計算対象となる期間を記入します。たとえば、毎月10日締めで賃金を支払っている場合は、「2022年9月11日~2022年10月10日」と、25日締めの場合は「2022年9月26日~2022年10月25日」と記載します。なお、日雇い労働者については、計算期間を記載する必要はありません。
④労働日数/⑤労働時間数
労働者が、「③賃金の計算期間」内に実際に働いた日数と時間を記載します。出勤簿やタイムカードを見ながら正確に記載しましょう。また、記入の際には以下の点にも注意してください。
- 労働日数は実働日数であり、就業規則などで定める所定労働日数ではありません
- 残業時間や休日出勤の日数・時間も含めます
- 有給休暇は働いたとみなし、労働日数・労働時間数に含めて記載します
⑥時間外労働時間数/⑦深夜労働時間数/⑧休日労働時間数
時間外労働とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超過した労働時間のことです。そのうち、午後10時から翌日午前5時までに働いた場合は、深夜労働時間に該当します。法定休日(週1日の休日など)に働いたときには、休日労働時間にカウントして記載します。
⑨基本給や手当等の種類と額
労働者に支給する賃金について、基本給と各手当を分けて記載します。基本給は、手当や割増賃金を含まない賃金です。時給で働く労働者については、時給×労働時間を記載します。次のような、基本給以外に支払われる手当などがある場合は、別途内訳を記載する必要があります。
- 各種手当(役職手当、通勤手当、住宅手当など)
- 時間外労働による割増賃金
- 賞与や臨時の給与 など
⑩控除項目と額
所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、賃金から控除されるものを記載します。懇親会費用など、会社独自のルールで控除している費用がある場合も同様に記載する必要があります。
賃金台帳の保管期限
賃金台帳の保管期限は起算日から5年間です。2020年の法改正によって、保管期限は3年間で良いという経過措置期間がありますが、5年間管理する体制を整えておきましょう。
なお、起算日とは、最後に台帳に記入した日 or 台帳に記入した賃金の支払日のどちらか遅い日となります。具体的には、賃金の計算期間が2022年9月1日~9月30日で、最後に台帳に記載した日が10月1日、賃金支払日が10月25日だった場合は、2022年10月25日が起算日となります。
保管は紙媒体でも電子データでもOK
保管媒体については具体的に定められていないので、紙媒体でも電子データでもOKです。しかし、賃金台帳は従業員数に比例して多くなりますし、保管期間も長いため、紙媒体で保管すると適切な保管場所の確保が必要となります。
そのため、パソコン上で賃金台帳を作成し、電子データで保管する事業主も増えています。ただし、電子データで保管する場合は、パソコンなどの画面上で表示し内容が確認できること、労働基準監督官の監査時などにすぐに印刷して提出できることなどの要件を満たす必要があります。
電子データの場合、誤って消去したり書き換えたりしてしまうリスクもあるので、従業員が少なければ紙媒体で保管しておく方が安心かもしれません。
まとめ
賃金台帳は、ただ作成すれば良いというわけではなく、法定項目を漏れなく記載し、ルールに従って保管する必要があります。賃金台帳の作成と保管は労働基準法で定められた事業主の義務であり、最重要書類の1つです。労務管理の面からも、書き方を正しく理解したうえで賃金台帳を作成しましょう。
なお、労働基準法について分からない点は、厚生労働省のQ&Aを参考にしましょう。
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【参考】厚生労働省|労働基準法に関するQ&A
今回はここまで。
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