株式会社と合同会社の違い|悩むときの判断基準は?
会社法で規定されている会社の形態は、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4つになりますが、東京商工リサーチの調査によると、2021年に設立された法人のうち、株式会社が66.4%、合同会社が25.5%と、法人を設立する人の大半が株式会社または合同会社を設立しています。
この記事では、株式会社と合同会社の違いのほか、メリットやデメリット、悩んだときの判断基準を分かりやすく解説しています。株式会社にするか、合同会社にするか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社の違いを表でまとめると、次のとおりとなります。
株式会社 | 合同会社 | |
所有と経営 | 分離 出資者が経営者を選任 |
一致 出資者=経営者 |
意思決定 | 株主総会 (出資比率で優劣が決定) |
社員の過半数 (出資額に関係なく平等) |
出資者の名称 | 株主 | 社員 |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
決算公告義務 | 有 | 無 |
上場 | 可 | 不可 |
役員の任期 | 最長10年 | 無制限 |
設立費用 | 20万円~ | 6万円~ |
株式会社と合同会社のもっとも大きな違いを1つ取り上げると、会社の運営方法が違う、ということになります。
株式会社は、所有と経営が「分離」されているので、会社の所有者である出資者(株主)は、経営能力の優れた人物(取締役)に会社の経営を任せることができます。一方、合同会社は出資した人が経営者となるので、基本的に所有と経営が「一致」することになり、出資比率に関わらず意思決定が平等となることから、出資者同士で対立した場合、簡単に意思決定をすることができず、誰かに経営を任せて会社をコントロールするオーナー経営ができません。
この点が最も大きな違いと言われるのですが、一人社長で、オーナー経営をする予定がなければ、株式会社でも合同会社でも大きな違いはありません。
なお、合同会社では出資者を「社員」と呼びますが、これは株式会社でいう株主に相当するもので、一般的な意味で使われる従業員という意味ではありません。
株式会社と合同会社で共通すること
株式会社と合同会社の違いは上記のとおりですが、共通することについても紹介しておきます。株式会社と合同会社で共通する主な点は、次の4つとなります。
- 出資者の責任は有限責任(出資額の範囲内でのみ責任を追う)
- 代表者は1名からでも設立できる
- 最低資本金は1円~
- 税制面、金融面(創業融資など)の取り扱いは変わらない
株式会社のメリット
メリット①
株式発行により資金調達ができる
株式会社の最大のメリットは、株式を発行して出資を募ることができる点です。出資者は、有限責任なので出資額以上の責任を負う必要がないうえ、株式会社は決算公告の義務があり出資者側が経営状況を把握することができるため、出資者が安心して出資することができます。その結果、上場していなくても、株式会社は資金を集めやすくなります。
メリット②
社会的信頼度が高い
株式会社は日本の大多数を占める法人格であり、社会的な知名度は抜群です。また、合同会社と比較すると株主総会や取締役会について厳格な法規制があるため信用度も高いといえます。社会的な信頼度が高いと、融資を受けやすかったり人材が集まりやすくなったりと、事業を運営していくにあたって有利にはたらくことが多くあります。
株式会社のデメリット
デメリット①
費用や手間がかかる
株式会社を設立するには、最低でも20万円以上必要です。合同会社と比較すると3倍以上コストがかかります。また、決算公告の義務があるため、決算期ごとに公告を官報に掲載する費用も必要です。その他にも、株式会社は定款の認証を受けなければならないなど、コストだけでなく事務的作業も多く発生します。
デメリット②
出資額のみで利益配分が決まる
株式会社では、出資額に応じて会社の利益を配分します。一見平等な仕組みですが、出資額以外での評価を利益として還元できないのはデメリットともいえます。例えば、業績の向上に貢献した出資者であっても、出資額が一番少なければその分の利益しか還元することができません。
合同会社のメリット
メリット①
株式会社よりも設立費用やランニングコストが少なく済む
電子定款を利用すれば、合同会社は6万円から設立することができます。また、決算公告義務もなく役員の任期もないため、官報への掲載料や役員の交代にかかる登記(登録免許税の支払い)なども原則不要となります。
メリット②
経営をスピーディーかつ自由にすすめられる
合同会社の意思決定は社員の総意により行われます。会社の重要事項について株主総会を開かなければならない株式会社と比べると、迅速な意思決定をすることができます。また、定款により組織体制や利益配分を自由に決められるので、功績のある社員に多く利益を配分することなども可能です。
合同会社のデメリット
デメリット①
出資を受けることができない
合同会社は株式を発行することができないため、原則として出資を受けることができません(出資者に役員になってもらう必要があります)。そのため、資金を調達するには、金融機関からの融資などに限定されてしまいます。
デメリット②
社員同士の関係性が経営に直結しやすい
定款で特別に定めない限り、合同会社における議決権は出資金額にかかわらず平等です。したがって社員間で対立して関係性が悪化すると、経営そのものがうまくいかなくなるリスクがあります。議決権や利益配分が出資額に比例しないがゆえに、社員の不満や軋轢を生む可能性があります。
株式会社か合同会社か?悩んだ時の判断基準
株式会社と合同会社にはそれぞれメリット・デメリットがあります。いざ設立しようとしたときに、どちらにするか迷うかもしれません。株式会社にしようか、合同会社にしようか悩んだときの判断基準は次のとおりです。ぜひ、参考にしてください。
株式会社が向いている場合
オーナー(株主)として会社をコントロールしたいとき
合同会社では、経営に関する意思決定をするとき出資者の過半数の同意が必要となります(業務執行社員を選定しているときは、業務執行社員の過半数の同意となります)。つまり、他の出資者が親族であるなど十分な信頼関係がある場合はいいのですが、信頼関係が十分ではない第三者が出資者となる場合は、意思決定が定まらず会社の経営に支障が出るおそれがあります。この場合は、株式会社を選択したほうがスムーズに経営が進むでしょう。
投資家からの出資を受けたいとき
投資家から出資を受けるときは、株式を投資家に売り渡すことになります。そのため、「株式」を持つ株式会社を設立することが必須の要件となります。
株式会社に変更する可能性があるとき
合同会社から株式会社に組織変更した場合、定款や会社登記の変更、法人印の再作成、銀行口座の名義変更、取引先への口座変更通知、ホームページや許認可にかかる名称変更など、非常に多くの事務負担が生じます。したがって、いずれ株式会社に移行することを考えているならば、初めから株式会社を設立したほうが余計な手間はかかりません。
対外的な信用を得たいとき
融資などの金融取引に関して言えば、合同会社であることが直接信用に影響を及ぼすことはないと考えられます。しかし、一般的には株式会社の信用度が高いのが現実です。信用が特に重視される業界においては、株式会社を選択した方がよいでしょう。
合同会社が向いている場合
設立費用を抑えたいとき
法人は設立するにも維持するにもコストがかかります。個人事業主が法人成りするときなど、少額で会社経営をスタートさせたいなら合同会社を選ぶとよいでしょう。
出資額にとらわれない関係性を築きたい場合
合同会社は利益配分を自由に決定でき、出資額の大小に影響されない関係性を築くことができるため、資金力はないものの、経験やノウハウの豊富な人などを集めやすいと言えます。
小規模のスタートアップをするとき
重要な意思決定をするとき、株主総会を必要とする株式会社と違い、合同会社は社員の総意で経営方針を決定できます。つまり、社員が少ないほど意思決定のスピードは速くなり、スムーズな運営をすることができます。
まとめ
今回は株式会社と合同会社の違いを解説しました。
同じ法人格であっても、株式会社と合同会社には異なる点が多くあります。
これから法人を設立される方は、株式会社と合同会社の違いや、それぞれのメリットやデメリットを比較し、どちらが自分に適しているか慎重に検討しましょう。
今回はここまで。
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