会社設立前に知っておきたい賢い公告の選び方
会社を設立するときには決めるべきことがたくさんあります。公告もそのうちのひとつですが、「どの公告方法を選んだらいいか分からない!」という方は多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな悩みを抱えている方に、あなたの会社にあった公告の賢い選び方を解説しています。ぜひ、参考にしてください!
公告とは
そもそも公告とは、会社の合併、分割、決算内容など会社の重要事項を広く知らせることです。
決算内容は株主や取引先にも影響するため、原則としてすべての株式会社は株主総会後に決算の公告を行うことが義務づけられています。とはいえ、費用や手間が非常にかかることから多くの中小企業では公告を行っていないのが現状です。
さて、公告の内容は会社法に定められていますが、大きく「決算公告」と「法定広告」に分けることができます。
決算公告
決算公告では、会社の決算に関する事項を取り扱います。定時株主総会が終わった後に賃借対照表の内容などを遅滞なく公告しなければなりません。
法定広告
法定公告では、決算以外の会社の重要事項を取り扱います。会社の合併・分割といった組織変更や資本金額の減少などを知らせる内容となります。
3つの公告方法
公告方法は次の3つの方法から選択します。
・官報に掲載する方法
・日刊新聞紙に掲載する方法
・電子公告で公開する方法
それぞれの公告方法の特徴は次のとおりです。
官報に掲載する方法
公告方法として最も一般的なのは官報に掲載する方法です。官報とは国が発行している機関紙で、法律の制定や改正などを伝えるものです。その中に、各企業の公告を掲載するページが設けられています。官報に公告を掲載するには、全国にある官報販売所へ連絡します。郵送やFAXのほかに、インターネット上からも申し込みができるので手続は簡単です。
料金
官報は掲載する行数や枠数によって料金が決まっています。決算公告を官報に掲載するには最低でも2枠、勘定項目が多い場合は3枠が必要となります。
掲載料金は2枠で74,331円、3枠で111,497円となります(税込/2023年1月時点)。
目安の金額をホームページに掲載している官報販売所もありますので、参考にするのもいいでしょう。
※参考【東京都官報販売所|掲載料金について】
日刊新聞紙に掲載する方法
公告を日刊新聞紙に掲載する方法もあります。公告を掲載できるのは「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙」と決められており、スポーツ新聞のような専門紙には掲載できません。全国紙を選ぶ会社がほとんどですが、ブロック紙や地方紙にも掲載することができます。
料金
日刊新聞紙への掲載は他の方法に比べて割高です。例えば、日経新聞(全国版)に決算公告を掲載する場合の目安は1,063,920円~、法定広告(吸収合併の場合)で954,800円~(税込/2023年1月時点)となっています。さらに、原稿の制作を依頼すると追加費用が発生します。
電子公告で公開する方法
紙媒体ではなくウェブサイトに公告を掲載することも可能です。自社のホームページでも公告サービス会社のウェブサイトでも、どちらでも構いませんが、上の2つの方法とは異なり、賃借対照表の全文(注記を含む)を5年間掲載し続ける必要があります。
料金
自社のホームページに掲載する場合は費用はかかりませんが、公告サービス会社のウェブサイトに掲載する場合は登録料や掲載料が必要です。例えば、帝国データバンクに決算公告を掲載する場合の費用は、1年間で33,000円、5年間で132,000円(税込/2023年1月時点)となります。
また、法定公告を電子公告する場合は、公告を適切に行っている証明として「電子公告調査機関の調査」を受けなければなりません。各調査機関によって調査料は異なりますが、目安として5万円~20万円ほどかかります。なお、調査機関は法務大臣の認可を得て登録された機関のみが実施できます。
※参考【法務省|登録された電子公告調査機関一覧】
公告の賢い選び方
各公告方法の特徴を理解したところで、どの方法があなたに合っているかを確認しましょう。
株式会社の場合
費用面だけで考えると、「決算公告を電子公告で行い、法定公告を官報で行う」のが最もメリットがあります。決算公告では圧倒的に電子公告が安く済みますが、法定広告では前述した調査料がかかるため、官報の方が費用を抑えられます。
ただし、電子公告による決算公告にもデメリットはあります。電子公告はURLを登記するため、公告先となるURLが変わるたびに変更登記が必要になり、その登記費用や手間がかかってしまう恐れがあります。また、電子公告は決算書を5年間開示し続けなければなりませんが、関係者に手の内を知られてしまう恐れもあり、その心理的な負担は決して軽くはありません。
会社の設立登記前に公告先となるURLが定まっており、決算書を開示することに抵抗がなければ電子公告の方が適しているといえるでしょう。
合同会社の場合
合同会社の公告は、「官報」が最良の選択となります。合同会社の義務は法定公告のみで、決算公告の義務はありません。したがって、株式会社のところで記載したように官報が一番コストのかからない公告方法となります。
さらに、法定公告のうち、資本金の減少や吸収・合併、解散など「債権者保護手続き」としての公告をする場合には、どの公告を選択していたとしても必ず「官報」で行わなければならない決まりがあります。定款で日刊新聞紙による公告や電子公告を定めていても、債権者保護手続きの公告には新たに官報公告を準備しなければならず、手間も費用も上乗せされることになります。
合同会社においては、官報公告以外を選択するメリットがほとんどないため、「官報」を選択するようにしましょう。
公告方法の登記方法
会社設立時に公告方法を必ず登記しなければなりません。電子公告を選択する場合は、公告方法を「電子公告」とし、公告先となるURLを一緒に登記します。会社設立までにURLが準備できなければ、URLが定まった段階で登記することになります(変更登記に関する諸費用が別途必要になります)。
(記載例)
公告をする方法 : 官報に掲載して行う。
公告をする方法 : 電子公告とする。 https://www.ABCDE.co.jp
また、公告方法を複数登記することも認められています。ただし、いずれかを選択するような登記は認められません。
(記載例)
◎公告をする方法 : 官報及び●●新聞に掲載して行う。
✖公告をする方法 : 官報または●●新聞に掲載して行う。
前述した「決算公告を電子公告で行い、法定公告を官報で行う」場合には、下記のように登記します。
(記載例)
公告をする方法 : 官報に掲載して行う。(決算公告以外)
貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項 : https://www.ABCDE.co.jp(決算公告として)
なお、公告方法は定款の必須記載事項ではありませんが、記載がない場合は自動的に「官報での公告」と登記されてしまうので、他の方法を選択したい人は定款に明記するようにしましょう。なお、定款には、電子公告のURLを記載する必要はありません。
まとめ
公告方法は自由に決められますが、適当に決めてしまうと余分な費用や手間がかかってしまう場合があります。3つの公告方法の違いを理解した上で、あなたの会社や事業に合うものを選ぶようにしましょう!
今回はここまで。
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