起業家に伝えたい大切なこと

脱サラ起業家が退職後におこなう健康保険の手続き

起業家バンク事務局

2023.05.26

会社員が退職するまで使っていた健康保険は、退職日の翌日から使用できなくなります。しかし、日本は「国民皆保険」という制度があり、すべての国民は健康保険へ加入することになっているため、脱サラした後もなんらかの健康保険に必ず加入しなければなりません。

あなたが脱サラして起業することを考えているなら、退職後の健康保険の手続きは、すばやく行う必要があります。この記事では、脱サラ起業家が選択できる健康保険について解説しますので、必ず目を通しておきましょう。

退職後に移行できる健康保険の種類

あなたがどの健康保険制度に移行できるのか、次のフローチャートを使って確認しましょう。このフローチャートは網羅的にまとめているため、様々なケースの起業に当てはまると思います。選択肢が複数ある場合は、保障内容や保険料などを比較して、もっとも有利な選択肢を選びましょう!

<移行フローチャート>

健康保険フローチャート

選択肢1|国民健康保険に加入する

健康保険料

国民健康保険の保険料は、「前年の所得」「年齢」「居住地」によって変動するため、加入者の状況によって大きく異なります。したがって、保険料がいくらになるか知りたいときは、居住地の自治体窓口に問い合わせるのが最も確実な方法です。なお、40歳から64歳までの人は、国民健康保険料に介護保険料が上乗せされます。

手続きの方法

居住地の自治体窓口に相談してください。ここでいう居住地とは住民票の住所地となります。国民健康保険に加入する手続きは、退職日の翌日(資格喪失日)から14日以内に行う必要があります

一般的に、手続きには①本人確認書類(運転免許証など) ②退職前に使っていた健康保険の「資格喪失証明書」 ③マイナンバーを確認できる書類が必要です。
その他各自治体によって手続きの詳細は異なりますので、あらかじめ窓口に確認しておくとスムーズに手続きできます。

その他、知っておいた方がいいこと

  • 法令で定められた所得基準を下回る世帯に対しては、保険料が減額されます。
  • 災害に遭い保険料を納められない場合など、特定の事情に該当したときは保険料の減免や納付猶予が受けられることがあります。

選択肢2|社会保険に加入する

大まかに言えば、社会保険とは「健康保険+厚生年金保険」のことです。したがって社会保険の健康保険の加入手続きは、厚生年金保険とセットで行います。

健康保険料

社会保険に加入する場合、通常、全国健康保険協会が運営する健康保険(通称:協会けんぽ)を利用します。健康保険料は、会社設立後に年金事務所に届出する「役員報酬の額」に比例して増減します。

保険料率は都道府県ごとに異なりますが、標準報酬月額の10%前後です。詳しい保険料率は、全国健康保険協会や協会けんぽの各支部のホームページなどで確認することができます。
なお40歳から64歳までの人は、健康保険料に介護保険料1.64%(全国一律)が加算されて徴収されます。

手続きの方法

手続きの方法は、郵送や電子申請などいくつかありますが、まずは会社の本店住所を管轄する年金事務所に相談するのがいいでしょう。手続きには、社会保険に関する書類の他、会社の登記簿謄本(原本)が必要になります。そのため、手続きまでに会社の設立登記を終えておかなければなりません。

このとき注意しなければならないのは「失業保険の受給を検討されている人」で、会社の設立登記を完了させると失業保険の受給資格を失うので、失業保険を受給中の人は十分気を付けましょう。

その他、知っておいた方がいいこと

  • 退職してから会社を設立するまで期間があく場合は、その期間は国民健康保険に加入しなければなりません。「すぐに会社を設立するつもりだ」 「すでに会社設立の登記申請をしている」など特殊な事情がある場合は、あらかじめ管轄の年金事務所に相談しておくと安心です。
  • 社会保険料は個人と会社で半分ずつ負担します。そのため、雇用する社員が多いほど会社の負担費用も増加します。
  • 会社の代表者も社会保険の適用対象者となりますが、役員報酬がゼロもしくは著しく少額の場合は、社会保険に加入することができません。

選択肢3|家族の扶養に入る

健康保険料

保険料は不要です。また、家族(扶養者)が支払う健康保険料が上がることもありません。扶養者が配偶者であれば、被扶養者は国民年金の第3号被保険者となり、国民年金の支払いも不要です。

手続きの方法

家族(扶養者)の方から会社または健康保険組合に問い合わせ、扶養にいれる手続きをします。
扶養に入る本人の手続きはありません。

その他、知っておいた方がいいこと

  • 家族(扶養者)が社会保険に加入していることが必須条件です。なお、国民健康保険には扶養の概念がないので、家族が国民健康保険に加入していても扶養に入ることはできません。
  • 起業後の年間収入が130万円未満でなければ扶養に入ることはできません。この要件に加え、家族の親等数、同一世帯かどうかなどで、収入要件はさらに細かく分かれています。
  • 収入要件を満たしたとしても、扶養に入れるかどうかは各健康保険組合(または全国健康保険協会)の判断に委ねられます。収入に関わらず事業主は扶養家族として認めないとする健康保険組合もあるようです。

選択肢4|任意継続する

健康保険料

会社員のときの標準報酬月額によって保険料が変わります。また健康保険を運営する組合等によって保険料率や計算方法も異なります。したがって保険料を調べるときは、全国健康保険協会または健康保険組合の窓口に問い合わせるのが最も確実な方法です。

手続きの方法

任意継続の手続きは退職日の翌日(資格喪失日)から20日以内に行う必要があります。
企業の健康保険組合を利用していた場合は「健康保険組合」の窓口に、全国健康保険協会を利用していた場合は「全国健康保険協会」の各支部に相談してください。

その他、知っておいた方がいいこと

  • いったん選択肢1~3の手続きを選択すると、任意継続は申請できなくなります。
  • 任意継続期間は2年です。期間満了後、延長することはできませんので、選択肢1~3のいずれかを選択することになります。
  • 任意継続すると保険料は約2倍になります。会社に所属しているときは、会社が半額を負担していたためです。ただし条件によっては、2倍以下となることもあります。

保障内容の比較

医療費の「自己負担割合」はどの健康保険制度も同じです。しかし医療費負担以外の保障については国民健康保険(選択肢1)よりも社会保険(選択肢2~4)の方が手厚いといえます。

国民健康保険と社会保険のちがい

  傷病手当金 出産手当金 出産育児一時金 葬祭料、埋葬料など
国民健康保険 なし なし あり あり
社会保険 あり あり あり あり

傷病手当金とは?

ケガや病気の治療のため、連続3日以上休業して報酬がもらえないとき、休業4日目から手当金が支給されます。これが傷病手当金となります。支給額は1日当たりの標準報酬月額の3分の2です。支給期間は支給開始から1年6カ月が限度です。なお、選択肢4の「任意継続」においては傷病手当金は支給されないので注意しましょう。

出産手当金とは?

出産日(または出産予定日)以前の42日から出産日の翌日以降56日の範囲内で、仕事を休み給与の支払いがなかった期間を対象に、1日当たり標準報酬月額の3分の2が支給されます。この支給金が出産手当金となります。

出産育児一時金とは?

被保険者(または被扶養者)が出産した場合、子ども1人につき50万円が支給されます(令和5年4月1日以降出産の場合)。双子の場合は、支給額は2倍です。この支給金が出産育児一時金となります。

葬祭費、埋葬料など

被保険者が亡くなったとき、国民健康保険では喪主に葬祭費が支払われます。この支給金が葬祭費、埋葬料等となります。金額は自治体によって異なりますが、5万円や7万円のところが多いようです。社会保険では埋葬料として一律5万円が支給されます。

扶養していた家族の健康保険料はどうなる?

勤めていた会社で配偶者や子どもを扶養家族として届出していた場合、起業後どの健康保険制度に移行したかによって扶養家族の保険料が変わります。

選択肢1|国民健康保険に加入する場合

前述のとおり、国民健康保険には扶養という概念はありません。したがって、これまで扶養していた家族全員を国民健康保険に加入させる必要があります。つまり、扶養家族の分、新たに健康保険料が発生します。例えば扶養家族が妻と子ども2人であった場合、3人とも国民健康保険に加入しなければならず、保険料も3人分かかります。健康保険料は世帯主がまとめて支払います。

選択肢2|社会保険に加入する場合

起業する人(被保険者)が支払う健康保険料で扶養家族の健康保険がカバーされるため、扶養家族分の健康保険料は生じません。

選択肢3|家族の扶養に入る場合

扶養家族も一緒に、起業する人の家族(扶養者)の扶養に入る場合は健康保険料は生じません。

選択肢4|任意継続の場合

選択肢2と同様、起業する人(被保険者)が支払う健康保険料で扶養家族の健康保険がカバーされるため、扶養家族分の健康保険料は生じません。

まとめ

健康保険の手続きが遅れると、その期間の医療費は全額自己負担(10割負担)となってしまいます。起業するあなた自身のことはもちろん、あなたの家族もいつ医療機関のお世話になるか分かりません。健康保険の手続きは、退職後に行う他の手続きよりも優先して行いましょう!

 

今回はここまで。
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