起業家に伝えたい大切なこと

経営革新計画の書き方(記入例)

起業家バンク事務局

経営革新計画とは、中小企業が革新的な商品やサービスの開発を通じて、売上や利益を向上させ、持続的な成長を目指すために策定される計画です。この計画は、「中小企業等経営強化法」に基づいて経済産業省が推進している制度であり、都道府県ごとに認定を受ける必要があります。

経営革新計画の認定を受けるメリット

経営革新計画の認定を受けると、税制優遇、低利融資の実行、補助金申請の優遇、外国人高度人材専門職のポイント加算など様々な特典を受けることができます。また、都道府県によっては、経営革新計画の認定者のみが申請できる助成金制度、高額設備のリース制度など、独自の支援を設けていることもあります。

経営革新計画を書くときに準備するもの

経営革新計画を書くときに準備する書類は少なく、以下の書類があれば計画書を作成することができます。

・直近3期分の決算書
・新規事業の商品、サービスのイメージ写真

経営革新計画の書き方

経営革新計画は都道府県単位で実施されているせいか、様式が都道府県ごとに微妙に異なっています。しかし、様式は違っていても計画書に記載する内容は同じなので、ここでは東京都の様式を参考に書き方を解説しています。

経営革新計画の内容は、主に以下の要素で構成されています。

1. 経営革新計画の要旨
2. 企業の現状
3. 経営課題と市場調査
4. 新規事業の内容
5. 実施計画と実績
6. 数値計画(経営計画及び資金計画)
7. 設備投資計画及び運転資金計画

それでは、それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

1. 経営革新計画の要旨

どの都道府県の様式でも、「経営革新計画の要旨」を作成します。経営革新計画は、全体で20~30ページの文量となるため、審査員が経営革新計画の全体像を迅速に理解できるよう、経営革新計画の要約版となる要旨を作成しなければなりません。要旨はフォーマットがあらかじめ決まっているため、フォーマットに沿って記載していきましょう。

この要旨は、経営革新計画書類の最初のパートに位置していますが、全体のまとめとなるので、経営革新計画を作成し終わった一番最後に作成した方が効率的です。

経営革新計画の要旨の記入例

①申請者名・資本金・業種

企業の基本情報を記載しましょう。業種の( )には、日本標準産業分類の4桁の業種コードを記載します。業種コードは下記のURLを参考に記載しましょう。

業種コードの参考URL:
総務省|統計基準等|分類項目名、説明及び内容例示 (soumu.go.jp)

②実施体制及び連携先

経営革新計画の新規事業について、誰が何を担当するか記載します。抽象的な内容ではなく、代表者や従業員の氏名を明記して、営業責任者は●●、システム開発責任者は▲▲など具体的に記載しましょう。

③事業活動の類型

該当する事業活動の類型に〇を付けます。経営革新計画の新規事業が新商品に関わるものであれば、「新商品の開発又は生産」に〇、新サービスに関わるものであれば、「新役務の開発又は提供」に〇を付けます。新規事業の内容と照らし合わせながら、〇を付けましょう。

④経営革新の目標

上段に経営革新計画のテーマを書きます。字数制限はないですが、30字ぐらいに収めると良いでしょう。下段には、新規事業の取組内容を簡潔に記入します。審査員が新規事業の骨子を迅速に理解できるよう、重要な情報を短く簡潔にまとめましょう。

⑤期間

経営革新計画は決算期ごとに作成します。経営革新計画は前期に遡って申請することができないため、計画期間の始まりの月は今期の期首の月を記載しましょう(3月決算ならば、4月が計画期間の始まりの月となります)。経営革新計画は3~5年の計画を立てますので、計画期間の終わりは、3~5年後の決算月となります。

⑥経営革新の実施に係る内容

フォーマットに沿って「当社の現状と経営課題」と「経営革新の具体的内容(既存事業との相違点、経営戦略における位置付け等)」を簡潔に記載しましょう。

⑦経営の向上の程度を示す指標

経営革新計画は、「経営の相当程度の向上」を図る計画であることが要件となります。経営の相当程度の向上とは、次の2つの指標が計画期間に応じた目標伸び率を達成することをいいます。したがって、下記の条件①と条件②の両方を満たす計画でないと承認を受けられません。達成可能で実現性の高い伸び率を設定するようにしましょう。

計画期間 条件①
「付加価値額」又は
「一人当たりの付加価値額」の伸び率
条件②
給与支給総額の伸び率
3年計画 9%以上 4.5%以上
4年計画 12%以上 6%以上
5年計画 15%以上 7.5%以上

2. 企業の現状

企業の現状は、経営革新計画の冒頭部分に位置するパートです。審査員が企業の基本的な情報を把握できるよう、図やグラフを使いながら記載しましょう。

企業概要

下記のような企業の基本情報を記載します。

・会社名
・本店所在地
・設立年月日
・資本金
・沿革
・従業員数(合計数と、部署ごとの従業員数を記載しましょう)
・取引先
・企業の強みや特徴(新規事業に関わる強みや特徴だと、評価されやすいです)

既存事業の内容

現在の事業内容を記載します。サービス業と小売業の両方を運営しているなど、売上のある事業が複数ある場合は、すべての事業について記載します。また、「お金の流れが分かるビジネスモデル図」を作成しておくと、審査員にも分かりやすいです。

経営状況

直近3期分の売上高や営業利益の推移など、直近の経営状況を分かりやすく記載しましょう。赤字となっている場合、数値が大きく変動している場合は、その理由を記載するようにしましょう。

既存事業の今後の見通し

既存事業の今後の見通しを記載します。文章だけではなく、表を作成して今後の具体的な数値を示して説明しましょう。後ほど、経営革新計画の数値計画を作成しますが、その数値と矛盾しないよう注意が必要です。

3. 経営課題と市場調査

前述の「企業の現状」をもとに、現在の経営課題を洗い出して記載します。この経営課題を解決するための経営革新計画なので、経営課題と経営革新計画の実施効果は相互に関連していなければなりません。

また、市場調査は、新規事業が現実的で成功する可能性が高いかを審査員が判断するために記載するものです。既存事業や新規事業に関わりのある市場調査を行いましょう。

4.新規事業の内容

当然ですが、ここが経営革新計画の中で最も重要なパートになります。新規事業の内容を書く際は、審査員が新規事業の意義や成功の可能性を迅速に理解できるよう、明確かつ具体的に記載することが重要です。

新規事業の内容は、以下の観点に基づいて記載しましょう。

提供する製品・サービスの内容

どのような製品やサービスなのか簡潔に説明します。具体的な特徴や独自性のほか、ターゲットについても必ず明記しましょう。そのターゲットが抱える悩みやニーズを記載し、今回の新規事業がどのように悩みやニーズの解決に繋がるか関連性を示します。

また、既存事業と同様に、ビジネスモデル図を作成しておくと非常に分かりやすいです。このほか、新規事業の実施体制(組織図)も記載して、営業責任者は●●、システム開発責任者は▲▲など具体的な氏名と役割を明示しましょう。

比較

新規事業が既存事業とどのように違うのか、新規事業が他の類似サービスと比較してどのような点で新しいのかを明確にします。既存事業との比較を行うことで、自社の新規事業がどのような価値を提供するかを明らかにできますし、競合先と比較することで、競争優位性(差別化要因、コスト優位性、ブランド力など)を具体的に把握できます。

この比較は審査のハイライトとなるパートで、審査員も細かくチェックしますので、丁寧に分かりやすく記載しましょう。具体的には、次のような表を作成して比較をすると分かりやすいでしょう。

取組状況

現在までの取組状況を記載しましょう。これまでの取組状況を示すことで、計画が単なるアイデアではなく、実行に移される確かな基盤があることを明確にできます。例えば、製品開発の進捗状況を示すことで、経営者の実行力や組織能力をアピールすることができます。

連携先

連携先がいる場合は、連携先の企業名等を記載しましょう。連携先がいない場合は、「なし」と記載しましょう。

資金調達

新規事業を実行するために何にいくら投資するか、そのための資金をどこから調達するかを記載します。投資内容や資金調達方法を明示することで、新規事業の規模感や実現可能性を示すことができます。

事業許認可

新規事業に許可・認可・届出が必要な場合は、その名称、取得条件、取得見通しについて記載しましょう。

経営革新計画を実施したときの影響

経営革新計画を実施した結果が、自社や取引先にどのようなメリットがあるのかを記載します。多方面から、経営革新計画の効果を総合的に示しましょう。

5.実施計画と実績

経営革新計画では、具体的な目標設定が重要となり、その目標を達成するための実施計画を記載する必要があります。なお、これから始まるビジネスなので、記載するのは「計画」の部分のみで、「実績」については記載する必要はありません。

以下に「アプリを開発して新たなサービスを始める」という新規事業を想定したときの具体的な記載例を紹介しています。実施計画を記載するときの参考になれば幸いです。

実施計画と実績のフォーマットの記入例

①番号

この番号は単なる整理番号です。実施計画のうち、大まかなカテゴリーごとに1、2、3・・・と数字を振ります。その数字の下に1-1、1-2・・・と枝番を付します。

②実施項目

設計開発、販路開拓など、大まかなカテゴリーを記載します。その下にカテゴリーを構成する実施項目を記載します。

③評価基準

達成具合をどのように評価するか示す項目です。新規顧客の獲得人数、製造原価など、できる限り測定可能な数値で示しましょう。数値で示すことはできないものは、「社内評価」などと記載すれば問題ありません。

④評価頻度

実施項目について、どのような頻度で評価するかを示します。毎日、1ヵ月ごと、四半期ごと、1年ごとなど、どのタイミングで評価を実施するか記載しましょう。

⑤実施時期

先ほどの②実施項目をいつ実施するか示す項目です。①の整理番号と記載方法が似ていて分かりづらいですが、この項目は計画期間を四半期ごとに「○年度-○四半期」の形式で表しています。年度は、事業年度の開始から終了までを1年とし、四半期は3ヶ月ごとに区切られます。

例えば、3月決算の会社の場合、事業年度は4月から始まり、翌年の3月で終了します。このため、計画期間が令和6年4月から令和10年3月までの場合、以下のような表記となります。

・1-1(1年目の第1四半期): 令和6年4月~6月に実施する
・1-2(1年目の第2四半期): 令和6年7月~9月に実施する
・1-3(1年目の第3四半期): 令和6年10月~12月に実施する
・1-4(1年目の第4四半期): 令和7年1月~3月に実施する

次の年度(2年目)以降も同様に、四半期で表記します。

・2-1(2年目の第1四半期): 令和7年4月~6月に実施する
・2-2(2年目の第2四半期): 令和7年7月~9月に実施する
・2-3(2年目の第3四半期): 令和7年10月~12月に実施する
・2-4(2年目の第4四半期): 令和8年1月~3月に実施する

上記と同じように、3年目、4年目も記載していきます。計画期間が5年であれば、5年分の実施項目を作成するようにしましょう。

具体的なアクションプランの記載

先ほどの実施計画を記載し終わったら、その実施項目ごとに、詳細なアクションプランを記載します。各施策について、「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を明確にし、新規事業がどのように実行されるか、いつから収益が見込めるか、どのようにリスク管理されるかを示します。

アクションプランやスケジュールが明確な実施計画は、審査員に対して説得力のある資料となります。これらの項目を分かりやすく示すことで、計画が実際に実行可能であることを示し、計画の具体性と実行力を強調することができます。

6. 数値計画(経営計画及び資金計画)

既存事業と新規事業の数値計画を策定します。全体の売上高や経費の予測だけではなく、人件費や給与総支給額など個別に計算しなければならないので、数値面に詳しくないと、このパートが一番難しく感じるかもしれません。

計画は既存事業と新規事業とを別々に策定します。既存事業と新規事業の見通しを立てるのは確かに難しいですが、いくつかの基本的なコツを押さえることで、初心者でも効果的な数値計画を立てることができます。

既存事業の数値計画

既存事業の見通しを立てるためには、過去の実績データを活用する方法が最も簡単でしょう。過去の売上高、利益、コスト、顧客数などのデータを確認し、成長傾向やパターンを分析します。過去3〜5年分のデータを基に、平均的な成長率や変動パターンを把握し、これを元に今後の見通しを立てましょう。

新規事業の数値計画

新規事業の商品・サービスの平均単価、平均販売件数を予測して収支計画を作成しましょう。単価や販売件数は適当に入れるのではなく、なぜそのような数値になったのか、類似商品の売れ行きや市場動向などから、積算根拠も明記するようにしましょう。

(経営計画及び資金計画)

(中期経営計画及び資金計画の算出根拠資料)

数値計画を立てる際には、社内だけでなく、商工会・商工会議所やよろず支援拠点、業界の専門家など外部の意見を取り入れることも重要です。外部の意見を取り入れることで、より客観的で現実的な数値計画を立てることができます。

7. 設備投資計画及び運転資金計画

最後に、設備投資計画と運転資金計画を作成します。このパートは特に難しくはないですが、設備投資計画と運転資金計画が、先ほどの数値計画と連動している必要があります。また、たとえば、新しい設備の導入が売上やコストにどのように影響するかを考慮し、その影響が運転資金計画に反映されているかなど、設備投資計画と運転資金計画が連動しているかの確認も必要です。

(設備投資計画及び運転資金計画)

設備投資計画の書き方

設備投資計画は、新規事業や経営改善に必要な設備や機械を導入する際の具体的な投資内容を示すものです。「機械装置名称」には、具体的な機械や設備の名称を記入し、「導入年度(年 月期)」に、設備の導入時期を記載します。これまでに記載した実施計画(スケジュール)や数値計画と矛盾しないように記載しましょう。

次に、各設備の「単価」と「数量」を具体的に示します。数量は必要な台数や個数にしておき、システム開発など具体的に表示できないものは一式で表示します。合計金額は、「単価 × 数量 = 合計金額」となるように、正確な合計金額を記載します。最後の行の「合計」は記載が漏れやすいので、忘れないように記載しましょう。

運転資金計画の書き方

運転資金計画は、新規事業や経営革新計画の運用に必要な運転資金(仕入れ資金、人件費、広告費など)の計画を示します。設備資金と同様に、年度ごとに項目と金額を明記し、これまでに記載した実施計画や数値計画と矛盾しないように記載しましょう。

経営革新計画のサポートが必要なら

経営革新計画は、中小企業が革新的な取組を行うための道筋を明確にする計画書です。計画の作成には、具体的な目標設定、現状分析、具体的な施策、数値予測、実行体制、資金計画など、具体的な記載が求められます。これらの要素を順序立てて書くことで、説得力のある経営革新計画を作成することができます。

経営革新計画の作成にあたっては、商工会議所や中小企業支援機関のサポートを活用することをお勧めします。経営革新計画の作成が初めてでも適切なアドバイスを受けることで、より質の高い計画書を作成することができます。特に数値計画のところは難しいので、アドバイスを受けつつ作成した方が良いでしょう。

それでも、どうしても難しい、時間が足りないという方は、起業家バンクのサポートをご活用ください。起業家バンクは事業計画書の策定を専門に行っており、実績も豊富なので、きっと皆さまの力になれると思います。

経営革新計画のサポート:
経営革新計画申請サポート|一律15万円 | 起業家バンク (kigyouka-bank.com)

資金調達アシスタント(計画書のチェックのみ):
資金調達アシスタント | 起業家バンク (kigyouka-bank.com)

 

今回はここまで。
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この記事を書いた人

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起業家バンクは事業計画書の作成専門店。
起業家のみなさま、すでに経営を行っている中小企業、ベンチャー企業の経営者さまに役立つ情報を提供しています。

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