日本政策金融公庫の創業融資に失敗しないために準備すること
日本政策金融公庫の創業融資は、起業を目指す人にとって強力な資金調達手段です。しかし、創業融資を成功させるためには、事前にそれなりの準備が必要になります。この記事では、創業融資に失敗しないよう事前に準備した方がいいことについて解説します。
創業融資で重視される融資のポイント
まず、どのようなことが創業融資のポイントとなるか確認しましょう。創業融資の審査は、決算書のように業績を確認できる資料がありません。そのため、創業融資は、次の5つのポイントを見て審査が行われています。融資を申込する前に、できる限り長い期間をかけて、しっかりと準備を行い、これらの5つのポイントについて準備をしましょう。
①実務経験
実務経験は、これから起業するビジネスが、これまでの職歴・スキルと関係あるかどうかという視点です。職歴と関係があれば評価され、未経験であれば評価はされません。
②ビジネスプラン(事業計画書)
ビジネスプラン(事業計画書)は、ビジネスモデルの完成度、スモールスタートをしているかどうか、資金調達計画に無理はないかという視点で評価されます。
③自己資金力
起業時に自己資金をいくら準備しているかという視点です。事業に使わない資金、不動産などの資産についても評価対象です。
④債務観念
債務観念とは、お金のことをしっかり管理できる人かどうかという視点です。金銭感覚、金銭管理について評価しています。
⑤信用情報
クレジットやローンの契約状況、支払いに関する取引情報を確認し、取引事実に問題がないか(信用情報)を確認します。
創業融資を受ける前に準備すること
すべてのポイントで評価されれば、創業融資を受けることができるでしょう。逆に、いずれかが評価されない場合は、他のポイントとの兼ね合いで総合的に評価されることになり、その評価が不足していれば、創業融資を受けることはできなくなるでしょう。
審査員は、これらのポイントについて、資料を確認したり、面談時にヒアリングをしたりして、情報を集めることになります。そのため、これらの項目で評価されるためには、やはり適切な準備を行うことが必要になるのです。
これらのポイントのうち、①実務経験は、すぐに対応できるものではありません。また、②ビジネスプラン(事業計画書)もボリュームが多いため、別の機会に解説したいと思います。そこで、この記事では、特に③自己資金、④債務観念、⑤信用情報に絞って、解説していきたいと思います。
いくら自己資金を準備すればいいのか
創業融資にあたり、自己資金力は非常に重要なポイントとなります。では、自己資金はいくらぐらい準備しておけばいいのでしょうか。
株式投資をした経験のある人であればイメージしやすいと思いますが、企業の安定性を測る指標として、「自己資本比率」という指標があります。自己資金比率とは、「全体の資産のうち、返済しなくていい資本が何割ほどあるか」を示します。自己資本比率は、一般的に30%以上が望ましく、10%以下であれば危険水域と判断されます。
つまり、起業するのに必要な資金の合計額(総投資額)の30%以上あれば、自己資本比率が30%以上となるので、金融機関の立場でいえば、おおむね安心して融資を実行できることになるでしょう。その場合、自己資金は総投資額の約3分の1となります。しかし、総投資額の3分の1の自己資金を貯めるのは、そう簡単な事ではありません。自己資金が3分の1に届かないのであれば、他のポイントで評価を上げるように努めましょう。
自己資金と認められるもの
自己資金といっても、何が自己資金として認められるのでしょうか。端的に言えば「返済する必要がないお金」が自己資金となります。たとえ、手元に資金があったとしても、カードローンなどで借入した資金であれば、それは自己資金として認められません。
自己資金として認められるもの
次のような資金は、通帳などで客観的に確認できる資金であり、出所を確認できるので、基本的に自己資金として認められます。
・預貯金口座で貯めた資金
・株式や投資信託など有価証券を売却して売って得た資金
・親族からの返済義務のない資金援助
・出資者からの出資金
・入金された退職金
自己資金としてグレーなもの
次のような資金は、自己資金として認められるかどうか判断が分かれるかもしれません。客観的な資料や領収書、同意の証明などを提出して、自己資金であることを示しましょう。
・未入金の退職金
・既に開業資金として支出した資金
・家族名義の預貯金
・知人や友人からの支援金
自己資金として認められないもの
タンス預金など出所がはっきりとしない資金、返済しなければならない資金は、自己資金として認められません。知人や友人、親族などから資金を借りる場合でも、その資金は負債(借金)になるので自己資金とは認められません。
・現金
・タンス預金
・知人や友人、親族からの借入金
うっかりの返済漏れ、生活習慣に注意しましょう
債務観念、信用情報も、創業融資の重要なポイントとなります。いずれも融資をしたときに、遅延なく返済をしてくれる人かどうかを、過去の支払い実績などを参考にしながら判断します。チェックされるポイントは、主に次のようなことです。
料金の支払いや返済を延滞していないか
家賃、公共料金、クレジットやローンなど、契約で定められた期日に支払っているかを通帳の履歴や信用情報などから確認します。信用情報では、ときどき本人も覚えていない昔の支払いが未払いのまま残っているケースがあり、この未払いが原因で創業融資を受けられないこともあります。本人が未払いであることを忘れ、相手方も督促をしていない場合、延々と未払い情報が残ってしまいます。不安のある方は、自分で信用情報を確認した方がいいでしょう。
クレジットカードの大量申し込みをしていないか
創業融資と同時並行でクレジットカードの申し込みを複数行っていると、手元資金が不足していると評価される可能性もあります。既に審査を終えて発行されているクレジットカードなら問題ありませんが、融資審査の期間中に複数のクレジットカードの申し込みをすると信用情報の評価が悪くなる可能性があります。創業融資の申込段階で、不必要なクレジットカードの申し込みは控えておきましょう。
消費者金融などからの借り入れはNG
生活資金でも起業のための資金でも、消費者金融から借入をしていると融資は断られる傾向にあります。仮に生活費として借入した場合でも、借入をしていなければ自己資金で支出しているわけなので、現在手元に残っている自己資金から、その借入分を控除して考えます。また、消費者金融は一般的に利率が高いので、利率が高いところから資金を借入するという行為自体、金銭管理に疑義があるという評価につながりません。申込の予定時期から逆算し、消費者金融などの借入は返済を済ませておきましょう。
創業融資の融資審査は厳しいのか
日本政策金融公庫は公的機関ですが、金融機関であるので、審査項目の評価が悪ければ、もちろん融資はしません。審査基準が甘くなれば返済ができない人が増え、金融機関としての業績は悪化し、結果として金融機関として存続することができなくなります。幅広い事業者に低金利で融資をできるのは、しっかりした審査のおかげだともいえるのです。
一方で、民間金融機関が単独で行う融資よりも基準が緩やかで、前向きに融資を検討してくれることも確かです。融資を依頼する際の金融機関の対応は杓子定規で融通が利かないと感じることは多いと思いますが、融資を受けられなかったときは、その原因を真摯に受け止め、ビジネスモデルを再設計するなどの工夫をして再申込を検討しましょう。
まとめ
創業融資を成功させるためには、しっかりとした事前準備が欠かせません。実務経験、事業計画、自己資金、債務観念、信用情報の5つのポイントを押さえたうえで、信用できる起業家であることをアピールすることが大切です。万全の準備を整え、創業融資を成功させましょう!
今回はここまで。
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