起業家に伝えたい大切なこと

法人登記の代表取締役等住所非表示措置のメリット・デメリット

起業家バンク事務局

2025.02.17

これまで法人を設立する際、代表取締役の自宅住所は必ず登記し、公に公開される仕組みとなっていました。しかし、2024年10月1日から、新たに「代表取締役等住所非表示措置」が実施されることになり、代表者の自宅住所を登記簿から非公開にできるようになりました。

特に、女性経営者や個人情報の流出を懸念する人にとって、プライバシー保護や安全対策の観点から大きな意義がある制度といえます。本記事では、法務局に確認できた内容をもとに、新制度の概要や申請方法、必要書類、メリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。

代表取締役等自宅住所非表示措置とは

これまで、法人の登記簿には代表取締役の自宅住所が記載されており、登記事項証明書を取得すれば誰でも閲覧できる状態でした。そのため、ストーカー被害や詐欺、嫌がらせといったリスクが指摘されていました。

2024年10月1日から施行された新制度により、代表取締役(または代表執行役)の住所を非公開にすることが可能になりました。これにより、個人情報の流出を防ぎ、安全性が向上します。

 

 

制度を利用できるタイミング

住所非表示措置を申請するには、必ず次の登記手続きと同時に申し出る必要があります。住所非表示のためだけの単独申請はできないため、適用したい場合は、以下のいずれかのタイミングで申請する必要があります(2025年2月時点)。

✅ 会社設立時(設立登記)
✅ 代表取締役または代表執行役に就任・重任したとき
✅ 清算人の登記または代表清算人に就任したとき
✅ 代表取締役の住所を変更したとき
✅ 本店を他の法務局の管轄エリアに移転したとき(新所在地での登記)

重任とは

「重任(ちょうにん)」とは、任期満了後も同じ役職を続けることを指します。例えば、代表取締役の任期が満了し、引き続き同じ役職を務める場合、新たに登記手続きが必要になりますが、このタイミングで住所非表示を申請できます。

自宅住所に変更がなくても申請できる

仮に代表取締役の住所に変更がない場合でも、上記のタイミングであれば住所非表示の申請が可能です。これを機に、プライバシー保護を強化したい場合は、該当の登記手続きと合わせて申請することをおすすめします。

必要な書類(上場企業以外)

① 会社の本店所在確認書類
配達証明書及び郵便物受領証、資格者代理人の確認書類

② 代表取締役等の住所確認書類
住民票の写し、戸籍の附票の写し、印鑑証明書など

③ 実質的支配者の本人確認書類
司法書士の確認書類、公証人認証書類(公証役場で定款認証時に受け取ったもの)など

必要な書類については、少し分かりづらいところがあるので、管轄の法務局に問い合わせたして確認した方が確実だと思います。

申請方法

申請書を提出し、前述の必要書類を添付することで非表示措置を適用することができます。申請書には以下の情報を記載します。オンライン申請をする場合は、「その他の申請書記載事項」に非表示措置希望の旨を記入します。

・住所非表示措置を希望する旨
対象となる者の資格、氏名及び住所
・添付する書類のリスト

制度を利用するメリット

住所非表示措置の最大のメリットは、個人情報の流出を防ぎ、安全に経営できることです。特に、女性経営者にとっては、ストーカー被害や嫌がらせのリスクを軽減できるため、大きな安心材料になります。

また、自宅住所が知られる不安から解放されることで、より安心して経営に集中できるのも大きなメリットと言えるでしょう。

制度を利用するデメリット

登記事項証明書の表示内容

住所非表示制度が適用されても、市町村名までは登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されます。そのため、完全に住所が非公開になるわけではありません。

(記載例)
✅ 東京都渋谷区(丁目・番地以下は非表示)
✅ 大阪市中央区(詳細な住所は非公開)

つまり、具体的な番地やマンション名などは登記簿で確認できなくなりますが、所在地の大まかなエリアまでは公開されるという点に注意が必要です。特に、プライバシー保護を重視する方は、「市区町村レベルでも住所が公開される」という点を理解したうえで活用することが重要です。

<登記事項の表示のイメージ>

過去の住所は非表示にできない

非表示措置が適用されるのは「現在の住所のみ」です。そのため、過去に登記された住所は登記簿に残ったままなので注意が必要です。例えば、重任の登記と同時に住所非表示の申請をした場合、下記のように住所に下線が引かれるだけで、非表示にはできません。したがって、新規に法人を設立する場合以外は、履歴が残ってしまうので、非表示にする意味が薄れてしまいます。

<登記事項の表示のイメージ>

金融機関の取引に影響するおそれ

住所非表示制度の最も大きなデメリットは、金融機関の融資審査に影響が出る可能性があることです。数百万〜数千万の融資を行う金融機関にとって、代表取締役の本人確認は必須となります。しかし、新制度によって法人登記簿から代表者の住所が非公開になると、金融機関は登記簿だけでは代表者の住所を確認できなくなります。つまり、同じ地域に同姓同名の人物がいる可能性が排除できなくなり、本人確認が難しくなります。

すでに取引のある金融機関であれば問題にならない可能性が高いですが、新しく口座を開設したり、融資を申し込んだりする場合は、事前に金融機関へ相談し、住所確認の方法を確認することをおすすめします。

法務局に確認した内容(2025年2月時点)

一度住所を非表示にすると、法務局から住所を証明する書類を発行できない(証明する書類そのものが存在しない)。定款を提出する方法も考えられるが、定款だけを別に作成することもできるので、その法人の定款であるかどうか保証がない。そのため、証明として認められない可能性がある。

まとめ

代表取締役等住所非表示措置により、代表取締役のプライバシーと安全が大幅に向上することが期待されます。特に、女性経営者や個人情報の公開に慎重な人にとって、起業のハードルが下がるメリットがあります。本制度を活用すれば、住所の公開リスクを抑えつつ、安全な経営環境を確保できるでしょう。一方で、金融機関からの融資の影響など、デメリットも小さいとは言えません。代表者住所を非表示とするか、慎重に検討しましょう。

起業家バンクは、月額700円の経営コンサルティングおよびタイムリーな補助金・助成金情報の調査代行をセットで提供する「資金調達アシスタント」サービスを提供しています。ご関心があれば、お気軽にご相談、お問い合わせください。

資金調達アシスタント:
https://www.kigyouka-bank.com/assistant/

 

今回はここまで。
お役に立てたでしょうか?

起業、融資、補助金などについて知りたいことがあれば、公式LINEからお尋ねください。匿名でのご相談にも広く対応しています。営業や勧誘は一切行いませんので、お気軽にお問い合わせください。

公式LINE:友達登録
https://page.line.me/vwf5319u

この記事を書いた人

起業家バンク事務局

起業家バンクは事業計画書の作成専門店。
起業家のみなさま、すでに経営を行っている中小企業、ベンチャー企業の経営者さまに役立つ情報を提供しています。

ブログ内の記事に関するご意見や不適切な表記については、電話番号「0120-905-061」にご連絡ください。当社にてご申告内容を確認したうえ、調査させていただきます。

「スモールビジネス成功読本」書籍販売中

公式ラインから相談できる
(友だち登録者数 1,752) 

友達追加から
友達を追加
QRコードから