美容室の創業計画書の書き方|日本政策金融公庫
起業家バンクの代表コンサルタントが日本政策金融公庫の出身の経営コンサルタントということもあって、独立以降、非常に多くの起業家から「創業計画書の書き方を教えてほしい」という相談を受けました。そこで創業計画書を作るためのポイントをまとめました。
「この記事を見れば分かるよ」と言えるぐらい充実した内容にしています。創業計画書の様式はマイナ―チェンジすることがありますが、融資審査の基本的な方法は変わらないはずなので、今後もポイントは変わらないと考えていいでしょう。
創業の動機、経営者の略歴
創業の動機
なぜ起業しようと思ったのか、その想いを正直に記載してください。ポイントは、箇条書きではなく、ストーリ性のある文章で書くことです。創業動機にストーリー性があると、担当者が起業家の想いを受け取りやすくなります。
例えば、
私は美容学校卒業後、都内の美容室に勤務しました。
〇年間、スタイリストとして経験を積んだ後、店長となり、店の運営を任されました。
美容に関する技術、知識は十分あります。また店長の経験から店を運営していく自信もあります。
このたび起業に必要な資金もたまったことから、自分の店舗を立ち上げることを決意しました。
などです。文章の上手・下手はあまり関係ありません。
単に「昔からの夢だった」、「金儲けがしたい」といった一文で終わるのは良くありません。一文だと「なぜ、今のタイミングで起業するのか?」ということが読み取りにくいのです。つまり、なぜ昨年ではなく、翌年ではなく、今なのか?、ということが分からないのです。創業動機にストーリー性があると、起業までの経緯、人物像などをイメージしやすくなり心証もよくなります。
経営者の略歴等
専門学校の名前と専門学校卒業以降の「勤務先」の名前を記載しましょう。ここは箇条書きで書きます。また勤務先名の横に「どのような仕事をしていたのか」を記載しましょう。例えば、アシスタント3年、スタイリスト3年などです。
美容師は会社員ではありませんから、本来、転職回数が多いことがダメなわけではないですが、担当する審査員によっては、転職回数が多いことに心証を悪くするケースがあるかもしれません。転職回数が多い場合は、古い勤務先を「〇〇美容室等」とまとめて書いてもいいでしょう。
取得資格は「有」にチェックし「美容師免許の番号」を記載しましょう。資格証は審査時に必ず提出するので、あらかじめコピーを取っておきましょう。
取扱商品・サービス
取扱商品・サービスの内容
記載するスペースが少ないので、細かく記載する必要はありません。①カット、②パーマ、③カラーなど、大きなカテゴリーに分けて記載しましょう。その横に、平均客単価(または平均単価)の予定額を記載しておきましょう。
細かい商品メニューが決まっている場合は、A4一枚程度の紙に、メニュー表を添付して創業計画書と一緒に提出しましょう。物販やエステ系のサービスを一緒に行うときは記載スペースが足りなくなるので、別紙を用意して提出するのもOKです。
セールスポイント
美容室というのは、基本的には「地域密着型」となり、競争相手が多いビジネスモデルですよね。その数多くの美容室の中で、自分の店舗が、お客さまに選ばれる理由(=強み、競争優位性)をピックアップして記載しましょう。
また、そのセールスポイントを裏付ける材料を準備しておきましょう。たとえば技術力の高さをアピールするならば「〇〇コンテストで入賞」など、接客力の高さをアピールするならば「前の勤務先の常連客は〇〇名でした」などです。必ずしも直接の因果関係や証拠書類の提出が必要になるわけではありません。審査員が「セールスポイントが認められる」と判断できる程度の材料を準備しておきましょう。
販売ターゲット・販売戦略
実際の経営に関して言えば、ここは最も重要なポイントの一つ、ですよね。しかし所定のフォーマットは記載欄が狭いので、ここで書く内容は基本的なことだけでかまいません。ただし審査員との面談では、この辺りがヒアリングの中心になります。
販売ターゲットは、OL、主婦、学生といった属性別の記載と、20代~30代の女性、50代以降のシニア層など階層別の両方を記載しましょう。
販売戦略は、マーケティングミックス(名前は知らなくてもいいです)に沿って考えると分かりやすいです。つまり、①商品の内容、②価格帯、③立地、④店舗の周知方法など、の4つの項目を、どのようなバランスで経営するか、です。基本的に、低価格路線と高価格路線の2つに分かれると思います。
競合・市場など企業を取り巻く環境
競合は、自分の店舗の周りに、同業者が何店舗ぐらいあるかを調べて記載しましょう。美容だけではなく、理容も調べておきましょう。「競合は〇〇のサービスをしているが、自分の店舗では〇〇のサービスをして特色を出したい」といえる「〇〇」が説明できると、審査員の評価はよくなるでしょう。
市場についてですが、美容業界の市場は、基本的に低価格路線と高価格路線の2極化が進んでいます。低価格路線は、規模が大きくならないと儲からないため個人事業で行っているところは少ないです。高価格路線は、エステや介護美容など、取り扱いサービスの範囲を広げようとしている事業者が多いです。市場については、創業計画書に細かく記載する必要はありません。
取引先・取引関係等
販売先
販売先は通常「一般客」になるはずです。「30代~50代の主婦層」などターゲットを一緒に併記しておきましょう。市町村の統計データなどから住所ごとの人口を調べることができるので、商圏にターゲットがどのぐらいいるか調べておくといいでしょう。
販売先は「一般客」で現金商売なので、シェアは100%、掛取引の割合は0%(現金商売)となります。回収・支払条件は余白に「現金」と記載しておきましょう。クレジットカードの支払いは掛取引ですが、あまり気にする必要はありません。
仕入先
シャンプー、カラーなどの消耗品の仕入先を記載します。確定していない場合は、予定の事業者名を記載しましょう。融資を申請する段階で仕入先が未定だと心証が悪くなる可能性もあるので、予定でも仕入先は必ず記載しましょう。
外注先、人件費の支払い
美容室で外注を使う機会は少ないはずなので「空欄」でOKです。人件費の支払いは、予定の期日を記載しましょう。審査に関わらないところなので、あまり気にする必要はありません。
従業員、お借入れの状況
法人の場合は、役員の人数と従業員の人数を記載します。個人事業の場合は、役員の人数を0にして、従業員の人数を記載しましょう。
お借入れの状況は、できる限り正確に記載しましょう。借入金の有無は審査の段階で調査して分かるので隠す必要はありません。ここで、借入金の支払いが遅れていたり、カードローンをいくつも申込していたりすると評価が下がる可能性があります。申込する前に少し整理していた方がいいかもしれませんね。
必要な資金と調達方法
作成手順
資金計画の項目です。左側が事業計画、右側が財源を表します。次の手順で記載すると、簡単に表を作成できます。
1.①に「自分で用意できる資金」を記載してください。退職金、返済義務のない親からの支援金はここに記載します。
2.②に当面必要な運転資金を記載します。月商の3カ月分以上は確保したいところです。
3.③に内装費、美容機器、敷金といった設備資金の総額を書きます。見積書を取って、見積先と見積金額を記載しましょう。
4.②+③から、①を引いた額が「④」になります。融資の申込金額と一致しているか確認しましょう。
5.総額を記載しましょう。⑤の額は、左側に右側も同額となります。⑤の額が①の額の3倍以下であれば、事業の成功率が上がるといわれています。もちろん融資も通りやすくなります。
事業の見通し
売上高の計算方法
売上高は次の算式で計算しましょう。この計算根拠は、右側の余白に記載します。
平均客単価 × 1日の客数 × 23日(平日) ・・・①
平均客単価 × 1日の客数 × 8日(土日) ・・・②
物販などの売り上げ ・・・③
売上高=①+②+③
売上原価・経費の計算方法
ビジネスモデルや取扱商品によって
売上原価(原価率)や経費は大きく異なります。
店舗の事情に合わせて記載しましょう。
創業当初の利益がマイナスになった場合、
そのマイナス分をどのように補てんするか検討しましょう。
軌道に乗ったとき
正解はないので、上記と同じ要領で記載しましょう。
自由記載欄
他に記載したいことがあれば追記してください。空白でも問題はありません。
まとめ
考えていることを文字や言葉にするのは難しいですよね。この記事のポイントを参考に、書き漏れ、伝え漏れがないように注意しましょう!
今回はここまで。
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