【2025】新規事業進出促進補助金の重要ポイントのまとめ
2025年4月、新規事業進出促進補助金の公募が始まりました。正式に公募が開始され、多くの企業や個人事業主から関心を集めています。
この補助金は、これまで中小企業の挑戦を後押ししてきた「事業再構築補助金」の後継的な位置づけです。しかし、制度設計には一部新しい考え方が取り入れられています。再構築補助金では認められづらかった建物の新築費用や構築物の整備費用も対象になるなど、柔軟な運用が特徴となります。
最大9,000万円という大型の補助金が用意されており、これを活用できれば、新たな設備投資やビジネスモデルの構築に大きな追い風となるでしょう。一方で、申請には注意すべき点も多く、制度の理解が成功のカギと言えます。
この記事では、「新事業進出促進補助金」を申請できる対象者や対象となる経費などについて、分かりやすく解説していきます。新たな挑戦のチャンスを確実にモノにするために、ぜひ最後までご覧ください。
補助金の対象となる事業者
ほとんどすべての個人事業主、中小企業が対象となります。このほか、企業組合、一般財団法人、一般社団法人、農事組合法人、生活衛生同業組合など各種組合も対象となります。そのため、次に記載している「補助金の対象外となるケース」に該当していなければ、補助金の対象事業者になると考えていいでしょう。
補助金の対象外となるケース
● 新事業進出促進補助金、事業再構築補助金、ものづくり補助金に採択され、現在進行形で事業計画を実施している事業者
● 事業再構築補助金で、適切に事業化状況報告を行っていない事業者
● 応募申請時点で、従業員数が0名の事業者
● 法人の新規設立、創業後1年に満たない事業者
● 他の補助金を受給していて事業化ができていない事業者(大幅な減点対象となり、実質は対象外といえる)
補助金の対象となる事業計画
新事業進出促進補助金は、単なる新規事業の立ち上げを支援するものではありません。既存事業とは異なる分野に挑戦し、賃上げにつながる事業計画であることを前提に、新市場性と高付加価値性が問われます。簡単に言えば、「新たに製造・提供する製品やサービスが、社会において普及度・認知度が低いこと」、そのジャンル・分野の中で、「高付加価値化・高価格化を目指していること」が、申請の条件となります。
たとえば、単に「飲食店を新たに開業する」、「美容サービスを始める」といった、すでに普及している認知度の高い事業計画は補助対象にはなりません。その業種・業態(ジャンル)の中でも、一般的な普及度が低い商品やサービスを始める必要があり、審査においてもこの視点が重視されます。一言でいうと、社会的な新しさが求められる点がポイントです。これらの条件を満たすかどうかの判断は、非常に専門的で難しい部分も多いので、お近くの商工会議所など専門家に相談して進めた方がいいでしょう。このほか、新しく始める事業についての注意点は次のとおりです。
新市場性・高付加価値化の例
●建設事業者が既存事業での木材に関する知見を活かして、オーダーメイドの無垢材木製家具の製造に取り組む事業
●畳製造事業者が、畳の複合施設(畳製品に触れ合えるカフェ・オープンファクトリーでの畳づくり体験)を開業する事業
●操作盤の内作により蒸留所を開設し、グレーン専用ウイスキーの開発販売を行う事業
●地域の観光資源と連携した体験型観光ホテルの経営を行う事業
補助金の対象外となる事業計画
● 事業の実施を他社に委託して、企画だけを行う事業計画(投資的な事業)
● 新たに取り組む事業の内容が、容易に実施可能である事業
● 不動産賃貸、駐車場経営など実質的な労働を伴わない事業(資産運用的な事業)
● 会員制ビジネスであって、その会員の募集・入会が公に行われていない事業
● 1次産業(農業、林業、漁業)
● 診療報酬・介護報酬などを受け取る事業(公的制度の二重受給となる事業)
● 他の補助金と同一の補助対象経費を含む事業
● 一時的な流行と認められる事業(大幅な減点対象となり、実質は対象外といえる)
事業計画書の要件
上記の事業計画を前提に、補助金の交付を受けるには、次の1~6の要件を満たした「3~5年の事業計画」を策定して申請時に提出する必要があります。特に、「3 賃上げ目標」や「4 最低賃金水準」について、計画が未達成の場合は、補助金返還という重いペナルティが課されるため、単なる希望的観測ではなく、現実的かつ実現可能な計画立案が不可欠となります。
1 新事業進出要件
事業計画期間終了後、新たに製造・提供する製品やサービスによる売上高または付加価値額が、応募時の総売上高の10%以上、または総付加価値額の15%以上になる事業計画が必要です。
2 付加価値額要件
補助事業終了後3~5年間で、付加価値額(または一人あたり付加価値額)を、年平均4.0%以上増加させる計画が必要です。
3 賃上げ要件 ※ 特に重要
一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、都道府県別最低賃金の過去5年間の成長率以上にすること、また、給与支給総額全体の年平均成長率を2.5%以上にすることの2つを満たす事業計画を策定することが必要です。なお、この目標値は、応募申請時までに、全従業員に表明しておかなければなりません。
申請者自身で目標値を設定する点がポイントで、高い目標を設定した場合、審査で高く評価されて採択時に有利になります。しかし、計画が未達の場合は、補助金の返還義務が生じるという重大なリスクがあります。安易な目標設定は絶対に避けるべきで、申請時は慎重に事業計画を検討しなければなりません。
4 事業場内最賃水準要件 ※ 特に重要
事業計画期間中、毎年、事業所内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高い水準に保つことが求められます。未達成の場合、補助金の返還義務が発生するため、慎重な計画が必須です。ただ、地域内最低賃金が毎年上昇していますので、「3 賃上げ要件」よりは、達成しやすい項目と言えます。
5 ワークライフバランス要件
次世代育成支援対策推進法に基づく、一般事業主行動計画を公表していることが必要です。
6 金融機関要件
自己資金のみで事業を実施できない場合、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受け、金融機関の確認書を取得する必要があります。この確認書の取得には1ヵ月以上を要することも多く、申請締切直前に金融機関に相談しても間に合いません。締切日から逆算し、計画的に事業計画書を作成しましょう。
補助金の対象となる使いみち
新事業進出促進補助金の補助金額は、従業員数などによって異なり、最大9000万円までの補助が可能です。補助率が2分の1で、補助金額の下限が750万円になるので、最低でも1500万円の投資を行う事業計画であることが要件となります。
補助金は事業計画を実行するために必要な設備投資や広報活動の費用などに対して、広く補助が行われます。費用の使いやすさを含めて、補助対象となる経費項目について、具体的な内容や注意点を解説します。
機械装置・システム構築費 〇 使いやすい
この経費は、事業に必要な機械設備や情報システムの導入費用が対象となります。新規事業進出促進補助金に申請する際は、必ずこの費目または次の「建物費」のいずれかを含めなければなりません。
機械装置・システム構築費は、例えば、生産ラインに導入する製造機械や、業務効率化のためのITシステムなどが対象となります。このほか、測定・検査器具、専用ソフトウェア、業務用アプリの開発なども、広く対象となります。
注意点として、対象となる機械装置やソフトウェアは、単価10万円以上であることが条件となり、少額のものも対象外となります。また、車両、パソコン、タブレットなど、汎用的に使えるものは補助対象外となります。なお、システム構築費が100万円以上となる場合は、採択された後に要件定義書や作業記録などの詳細な書類の提出が求められるため、あらかじめ準備が必要です。
建物費 〇 使いやすい
新たな事業活動の拠点となる建物や施設の建設、改修費用が補助対象となります。例えば、生産施設、加工施設、販売所、作業場などがこれに該当します。再構築補助金では認められづらかった「建物の新築」も今回は認められており、駐車場や外構などの「構築物」も補助対象に含まれています。
注意点として、補助金で建てた建物を賃貸用に転用することは禁止されています。もし転用が発覚した場合は、残存簿価相当額を国庫に返納しなければならないので注意しましょう。
外注費 ▲ やや使いづらい
検査や加工、設計業務などを外部の専門事業者に委託する際に発生する費用を、外注費として申請できます。しかし、補助金の対象となるにはいくつか条件があります。
まず、事業計画書に外注先の情報や選定理由を記載する必要があります。そのため、事前に外注先となる業者を選定しておかなければなりません。また、補助金全体の10%までという上限が設けられているため、大規模な外注には不向きです。
専門家経費 ▲ やや使いづらい
技術的な指導や助言が必要な場面では、学識経験者やコンサルタント、フリーランスの専門家に支払う報酬や旅費など、いわゆる専門家経費が対象となります。ただし、これも外注費同様に、事業計画書に専門家の略歴や必要性を記載することが必須となります。さらに、補助額にも制限があり、最大で100万円までです。事業計画書の作成をサポートする専門家は、専門家として選定できないルールとなっており、専門家選定の手間や申請書類のボリュームを考慮すると、積極的に活用しづらい項目といえます。
クラウドサービス利用費 ✕ 使いづらい
サーバー代などのクラウドサービスの利用に関する費用も補助対象になります。しかし、条件が厳しく、今回の事業計画以外の事業(本業)と共用する場合は対象外となります。つまり、今回の事業計画用に別途サーバ等を用意しなければなりません。
さらに、補助対象となる事業実施期間も、交付決定後~事業完了後までなので、せいぜい1年程度の費用しか対象になりません。金額もさほど大きくないうえ、後々、見積書や契約書の提出が必要となり、申請の手間に比べて効果も薄いため、使いづらい項目です。
広告宣伝・販売促進費 〇 使いやすい
事業の立ち上げにあたり、広告宣伝、PR活動にかかる費用が補助対象となります。パンフレットやチラシ、紹介動画の制作費、展示会出展費用、ウェブサイトの構築費など、幅広い費用が対象で、使いやすい項目といえます。ただし、マーケティング調査など、直接の広告宣伝・販売促進にならない費用は対象外となります。
注意点として、補助上限が定められており、上限額は「計画期間内の売上見込み額 ✕ 5%」となっています。1000万円の売上見込みに対し、50万程度の広告宣伝・販売促進費になるので、インパクトはやや薄いかもしれません。
なお、ウェブサイト構築費が100万円を超える場合は、採択後に要件定義書などの詳細資料の提出が必要となります。また、実績報告時には、成果物の写真や広告掲載の記録資料が必須と強調されています。そのため、成果物の写真・記録がとりづらい広告宣伝・販売促進費(YouTube等でのインフルエンサーマーケティング)は、避けた方がいいかもしれません。
まとめ
新事業進出促進補助金は、注目度の高い新しい大型補助金です。既存事業とは異なる分野への挑戦を支援し、最大9,000万円の補助が受けられるチャンスがありますが、申請には厳格な要件が設けられています。
特に重要なのは、新市場性・高付加価値性のある事業計画を立案する点、さらに賃上げ目標や最低賃金水準などを達成しなければ補助金返還義務が生じるリスクがある点です。また、資金調達のためには金融機関からの確認書取得が求められるため、準備には十分な時間が必要です。
この補助金を活用するには、事前の計画作りと専門的な支援が成功のカギを握ります。制度の内容を正しく理解し、着実な準備を進め、新たな挑戦のチャンスを確実にモノにしましょう!
今回はここまで。
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